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ブログ・野口 誠一
第21回:転ばぬ先の杖
2004年3月7日
前回までは「倒産の前ぶれ15か条」について触れたが、その多くは経営者自身に関する事柄だったと言っていい。それを参考に自己チェックしていただければ「転ばぬ先の杖」となろう。
私も日々相談に訪れる経営者を、15か条に照らしてチェックしているが、やはり誰にも1つや2つは当てはまるようである。ただ、なかにはチェックしにくいタイプの経営者もいる。先日、たまたまそういうタイプが相前後して訪れた。今回はそのことについて記そう。
一人は非常に頑固なタイプだった。私が経営改善策を提示するたびに、「お言葉を返すようですが」と前置きしてはことごとく否定し去る。たとえば「銀行に返済の延長や金利の減免をお願いしてはいかがですか」と提案すると、「お言葉を返すようですが、そんなことをしたら貸しはがしされてしまいます」と否定。それではと「この遊休地を売却して有利子負債を軽減してはいかがですか」と提案すると、「お言葉を返すようですが、そこは当社発祥の地ですから売るわけには参りません」とこれまた否定。まったくとりつく島がない。3時間も話し合ったが何の結論も得られなかった。こういうタイプは疲れる。
もう一人は逆に、必要以上に素直なタイプだった。私が「赤字支店はリストラしましょうよ」と言うと、「はい、リストラします」。「週2のゴルフは少し多いんじゃありませんか」と言うと、「月1ぐらいに落とします」。「無駄な経費が多いようですが」と言うと、「洗い直します。私も電車で支店まわりをします」。万事がこの調子で、彼は喜んで帰っていった。私も気持ちがよかった。
が、何気なく2階の事務所から下を見ると、なんと、彼がタクシーに乗って行くではないか。すぐ目の前が稲荷町の駅だというのに。私はドッと疲れが出た。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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