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ブログ・野口 誠一
第26回:倒産の原因第7位/公私混同と経営哲学の欠如
2004年3月23日
「倒産の原因ワースト10」の第7位は、経営者の「公私混同と経営哲学の欠如」である。
社員・従業員が一番嫌がるのがこの経営者の公私混同である。せっかくのアフターファイブや土・日を、社長の私用にかり出されたりこき使われたりしてはやりきれない。
公私混同タイプの経営者は、社員に給料を払っていることをもって「食わしてやっている」と思いこみがちだが、これは誤解もはなはだしい。社員に給料を払っているのは社長ではない。消費者である。その会社が提供する商品やサービスを消費者が指示してくれるから、会社の経営も社長、社員の給料も成り立っているのである。
とすれば、むしろ社員の働きが社長の収入を支えていると言っても過言ではあるまい。松下幸之助が「私は社員のうしろ姿に手を合わせている」と言ったのも、そのことにほかあるまい。
そこを忘れて、大切な消費者の評価(すなわち利益)を私物化し、接待を名目に遊びまわったり、はなはだしくは妻や子供の車を購入したり、という経営者も少なくない。
そうした公私混同を目の当たりにしたら、当然ながら社員の士気は低下し、やがて有能な社員から先に辞めていくに違いない。その先は言うまでもなく倒産である。
では、経営者の公私混同に何をもって歯止めをかけるか、と言えば、それは経営哲学しかない。
かつてヤマハ中興の祖・川上源一は「人のために役立つものをもって事業となす」と言ったが、こういう哲学と公私混同はおよそ両立しない。社員は給料のためだけに働いているわけではない。経営者の哲学に共鳴し、自分の会社に誇りを持てばこそ、使命感をもって働けるのである。そしてそのとき、社員の能力も最大限に発揮されると言っていい。中小企業であればあるほど、経営哲学が必須であろう。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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