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ブログ・野口 誠一
第49回:倒産者に共通する性格第15条・「何とかなる」の甘え
2004年6月2日
倒産者に共通する性格の第15条は、「何とかなる」という甘えである。倒産者は倒産のその日その時まで、自分は倒産するはずがない、何とかなる、と思い込んでいるものである。その思い込みには何の根拠もないのだが、根拠がないだけによけい思い込みは激しい。経営者にとって、心血を注いだ経営に終止符を打つことは、身を切られるよりも辛い。が、坂を転げ落ちる轍を止めることはできない。つまり、「何とかなる」は「何ともならない」ことの裏返しにすぎないのである。
年間倒産2万件時代を映して、八起会はハローワーク以上に忙しい。倒産一一〇番は鳴りっ放しだし、駆け込み相談も後を絶たない。が、ぎりぎりになってからの経営相談も多く、なかには手遅れのケースも少なくない。そういうときは心を鬼にして、「早目に整理をしましょう」と言わざるを得ない。しかし「何とかなる」との思い込みが強い人ほど納得しないし、なかには怒りだす人もいる。そこを説得するのは骨が折れるが、放ってもおけない。いずれ倒産しかないのに、「何とかなる」ともがけばもがくほど当人が苦しむ。また、倒産を先送りすればするほど負債、借金がかさみ、取引先にも金融機関にも迷惑がかかる。早期退出も経営能力の一つである。なし崩しの倒産だけは避けなければならない。すなわち「見切り千両」である。
日本経済は目下デフレ不況にあえいでいるが、その大方の原因は「先送り」にある。政治は構造改革を先送りし、銀行は不良債権処理を先送りし、企業は倫理の確立を先送りした。そのツケがたまりにたまって今日のていたらくである。とめどない資産デフレを「何とかなる」と見送り、見切り、損切りを怠った罪である。デフレは時間との闘いであり、何よりもスピードが要求される。見切り千両とはそのことである。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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