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ブログ・野口 誠一
第73回:危ない経営者第8条・無形の財産に投資しない経営者
2004年8月12日
「危ない経営10か条」の第8条は、「無形の財産に投資しない経営者」である。
企業にとって無形の財産とは何か。社員である。社員の能力である。日本の企業はバブル崩壊まで、この無形の財産をそれほど重視してこなかった。新卒の採用にしてからが、大学のブランドとペーパー試験が中心で、企業といえども偏差値に頼っていた。その結果、平均して3割が優秀、4割が普通、残りの3割が落ちこぼれという3・4・3のパターンが定着し、優秀な3割が落ちこぼれの3割をカバーする企業構造となっていた。これでは利益率も生産性も上がるはずがない。それでも破綻なく経営できたのは、右肩上がりの経済成長が続いたからである。
が、バブルがはじけ、グローバル市場時代に突入し、デフレとゼロ成長が続くなかで、日本的経営の矛盾が一挙に噴出し、「失われた10年」という長期低迷に見舞われた。中小企業はもとより、大企業や銀行までがバタバタ潰れるなかで、生き残りをかけた選択と集中、合併とリストラ旋風が吹き荒れた。いっさいの無駄をこそげ落とさなければ生き残れなかったからである。そしていま、ようやく景気が回復し、企業にも経済にも明るさが戻りつつある。が、その光景はバブル崩壊以前とは様変わりと言っていい。
今やかつての3・4・3のパターンなど影も形もない。即戦力となるヘッドハンティング、通年採用、能力給が主流である。そしてリストラ後を埋めたのがパート、派遣社員、アウトソーシングである。この様変わりはどこから来たか。あのバブルの時、社員の能力開発という無形の財産に投資することを忘れ、土地や株式など有形の財テク投資に走った結果である。中小企業はこの失敗を教訓とし、社員の能力開発に投資して人材を人財に変えるべきであろう。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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