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ブログ・高橋 聡
第172回:働き方改革への対応(同一労働同一賃金(1))
2020年4月30日
働き方改革関連法が順次施行されています(【図1】)。
そこで、働き方改革関連法への対応というテーマで法改正への具体的な対応策について解説してまいります。
今回は(同一労働同一賃金)への対応について説明します。
「同一労働同一賃金」とは、厚生労働省によると、「同一企業におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すもの」とされています。パートタイム・有期雇用労働法の施行により中小企業では2021年4月から実施されます。
例えば、製造業であれば現場に正社員と有期雇用社員や派遣労働者が一緒に働いているので、この法律の影響は大きいですが、中小運送業の現場ではアルバイトや派遣ドライバーが正社員ドライバーと同じ労働をしているという会社以外は、さほど大きな影響はないと考えます。
影響があるとすれば、定年後のドライバーを嘱託契約などで有期雇用に切り替えている会社のケースになります。多くの中小運送業の現場ではドライバー不足のため定年後も給与を改定せずに、事実上定年を延長して同様の業務に従事しているドライバーが多いと思います。このように正社員のまま同一の運行業務に従事している場合、または、嘱託等有期雇用契約に切り替えて雇用した場合であっても、給与を改定せずに雇用しているのであれば、「同一労働同一賃金」になっていますので、特段の対応は不要になります。
問題となるのは、「長澤運輸事件」(平成30年6月最高裁判決)で争点とされたように、定年前と同一の労働に従事させていた場合に、会社が労働条件の引き下げを行うようなケースです。
「長澤運輸事件」では「精勤手当」「時間外手当」に関し正社員と嘱託社員で格差を付けることは違法であると判断されました。しかし、「給与の21%の引き下げ」は総合的に判断すると違法ではない、と判断されています。なお、同社の場合、労働組合との交渉経緯や退職金支給があったことなど、諸条件が勘案されています。
「長澤運輸事件」以外にも同一労働同一賃金関連の判決が複数ありますが、「同一労働」つまり、運送業で言えば同じ荷主の同様の運行ルートを担当して、定年後も同様の運転業務に就く場合、諸手当や給与額、労働条件は正社員と格差を付けられない、という考え方になっていくでしょう。
対応策については次号で解説いたします。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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