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ブログ・高橋 聡
第173回:働き方改革への対応(同一労働同一賃金(2))
2020年5月14日
働き方改革関連法が順次施行されています(【図1】)。
そこで、働き方改革関連法への対応というテーマで法改正への具体的な対応策について解説してまいります。
今回は前号に続き(同一労働同一賃金)への対応について説明します。
前号で「同一労働同一賃金」導入の概要を説明しましたが、中小運送業の現場で留意する事項や対応策は、どのようなものでしょう。
「長澤運輸事件」や「ハマキョウレックス事件」の最高裁判決及び、その後、起こっている同一労働同一賃金関係の判決などを見てみると、一部例外を除き、ほぼ全ての手当について格差がつけられない、つまり正社員には支給し有期雇用社員には不支給とするなど、労働条件に格差をつけることは出来ないと理解すべきです。
労働契約法20条には「職務内容」「責任の程度」などにより不合理な格差をつけてはらないと定められていますが、これが(同一労働同一賃金の)考え方の根拠となっています。
さて、中小運送業の現場で留意すべきポイントとしては、定年後再雇用し、正社員が有期雇用契約に切り替わり、「嘱託契約」などとなった場合において、「同じ運行」を実施する場合は正社員の際の労働条件と格差を付けることは出来ない、と言い換えることができます。よって、「同じ運行」をする場合は、給与も同様の水準で支給しなくてはならない、ということとなります。特段の給与変更を行っていない企業であれば、特段の対応は不要です。
「長澤運輸事件」では正社員時の給与を約2割引き下げたことが「違法ではない」と判断されてはいますが、定年時に退職金を支給していること、年金受給が間もないこと、組合との交渉経緯等個別事情を勘案しての判断なので、正社員時支給水準の8割というのが絶対基準とはならないでしょう。
さて、中小運送業で定年を迎えたドライバーを嘱託等有期雇用契約に切り替えた場合に、給与に格差を付けたい場合は、「運行ルート」「担当エリア」「走行距離数」「荷積み・荷下ろし回数」「勤務日」「勤務時間」などのいずれかについて、「同一」ではなく「異なる」運行に切り替えることが必要になります。「異なる」程度に応じて給与額、歩合率、運行単価などの給与支給基準について差があることは特段問題ないでしょう。
また、正社員であれば安全会議などの会社行事への参加が義務であったが、嘱託社員については任意参加とするといった会議体への出席義務という面で差をつけることも有効と考えられます。ドライバー以外の職種も含めて、正社員と嘱託社員の違いを「職務分掌表」「担当職務・権限一覧表」などで明文化しておくことは、対外的に会社の考え方を示すために有効です。
高齢者は若年層に比べるとモラールが高く経験もあります。健康な高齢者は、これからの運送業経営には必要な人材です。
(同一労働同一賃金)に留意しドライバー不足問題に取り組むことが必要です。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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