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ブログ・高橋 聡
第176回:働き方改革への対応(労働時間の適性の把握)
2020年6月25日
働き方改革関連法が順次施行されています(【図1】)。
そこで、働き方改革関連法への対応というテーマで法改正への具体的な対応策について解説してまいります。
今回は「労働時間の適正な把握」への対応について説明します。(その①)
働き方改革関連法の中で、時間外労働の上限規制が盛り込まれたのは、これまで説明した通りですが、規制の対象となっている時間外労働の時間数の把握方法に関して、これまで法令上の定めはありませんでした。過労死や健康問題がクローズアップされる中で、そもそも自社の社員の労働時間数の把握があいまいであったとすると、時間外の上限規制などのルール化も骨抜きになってしまう可能性があります。そこで、会社側に労働時間を把握すること自体を労働安全衛生法改正により法制化したものです。
昨年4月に大企業、中小企業を問わず施行されていますが、中小運送業の現場では、その認識はまだまだない、というのが実情です。まずは、このような背景で労働時間を把握することが義務化されていることを理解しておく必要があります。
労働時間数は「拘束時間︱休憩時間」で計算しますが、中小運送業の現場では「休憩時間」の正確な把握が出来ていないため、労働時間数を正確に把握できている会社が少ないのが現状です。未払い残業代の事案が発生した場合、相手方専門家は休憩時間も含めて請求してくることが多くあり、「休憩時間」について証拠をもって示すことは未払い残業代対策としても大変重要なことです。
時間把握の義務付けは、すでにスタートしていますので、今後、労働基準監督署の調査などでも重点的に指導対象となっていくでしょう。
これを機に、時間把握に関する認識を変えることが必要と考えます。
さて、把握の仕方に関しては「客観的な方法」とされており、ICカード、PC、スマホ、タイムカードなど電子機器によること、もしくは自己申告によるものとされています。このような背景よりスマホ型勤怠管理システムに関して、数十種類の機種がリリースされていて、それぞれ特徴ある商品となっています。手作業による集計は限界があるため、事務員や倉庫作業員に関しては勤怠管理システムを利用すべきでしょう。勤怠管理システムであればデータ管理であるため、給与計算への活用や保存が容易です。残業申請、承認のシステム化も可能となります。時間外労働は会社が指示・承認することが必要ですが、実際には社員の個人判断で時間外労働をしていることが多いのが実情ですので、残業申請管理システムを導入すべきです。
2020年4月からの時間外規制の対象となるため、月45時間を超過しそうな場合にアラームを鳴らしたり、本人や社長にメールを発信するといった仕組みを作ることをお勧めます。残業時間数の分析や傾向をつかむことも容易にできるようになります。
次号ではドライバ―の時間管理について説明します。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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