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ブログ・高橋 聡
第206回:令和時代の運送業経営 労務トラブル実例編
2021年9月30日
【労務トラブル実事例編】②
「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウイルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。
今回も前回に続き、実際に発生した「労務トラブル実事例」とその対応策について説明してまいります。
1.労務トラブル実事例
⑴トラブル内容
入社後半年勤務事務員(女性Cさん42歳)。周りの社員に「この会社の組織はおかしい」「社長のやり方に問題がある」といった発言が多いこと(他社員へのヒヤリングにより発覚)、他の社員に対するハラスメント的行動があったほか、給与台帳の作成、明細発行をやっていることから社員給与の情報を持ち、「あのドライバーは歩合給が◯円」といった給与情報をほかの社員に洩らしているらしいことがわかった。口頭で数度となく注意したが改善しないため、試用期間満了に伴い「正社員登用しない」旨を申しつけたところ、「不当解雇だ」「ユニオンに相談しに行く」と発言。
やむなく試用期間を延長したうえで継続雇用中。
⑵事例のポイント
本事例では、会社に対する批判的発言や給与情報などの漏洩問題を引き起こす女性事務員の正社員登用に関する事例です。社長及び奥様(取締役)に、その女性社員の問題発言などが他社員から報告されていたそうです。何度か「口頭」で注意していましたが、明確に「指導」しているとは言えない程度にしか出来ていなかった、という状況が続いていました。
社長が最も許せなかったのは、給与・歩合給の情報をほかの社員に洩らしていたことです。給与情報は配車に影響があるため、会社として神経を使いながら管理している情報であり、漏洩により「もっといい配車をしてくれ」「なんであいつの方が歩合がいいのか」といった不満の声が出始めていたからです。
会社の悪口をほかの社員に公然と話すことも多くあったようで、業務に支障をきたし、社内の雰囲気も悪化していたとのことです。さらに、同僚の女性事務員に対して高圧的な口調で話すことなど問題視されていました。
このような場合、しっかりと本人と話をして改善してほしい点を明確にすることが必要です。「正社員登用しない」という判断はやや拙速であったと考えられます。採用した以上、粘り強く指導し、改善を促す努力を行うことが必要です。
2.対応策
「試用期間の延長」は就業規則に根拠があれば可能ですが、最長でも12か月程度とすべきです。問題のある行動をおこした社員に対しては、「勤務改善指導書」「始末書」などの文書を都度発行し、注意・指導した実績を客観的に提示できるようにしておく必要があります。「勤務改善指導書」には「上司の指示に従うこと」「同僚社員と協調すること」など具体的な改善に関して記載し、改善を促すことが必要です。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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