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ブログ・高橋 聡
第224回:令和時代の運送業経営 労務トラブル実例編(19)
2022年7月15日
【労務トラブル実事例編】⑲
「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウイルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。
今回も前号に続き運送会社で実際に発生した「労務トラブル実事例」とその対応策について説明してまいります。
1.労務トラブル実事例
⑴トラブル内容
埼玉県所在の運送会社A社(社員数50人)は郵便配送、ネット通販系の商品配送を行う運送会社であった。同社では最近若手社員の入社が増えていたが20歳、30歳代の若手社員が入社後、すぐに辞めてしまうケースも多く、同社B社長は対応に苦慮していた。同社では入社後2週間程度は先輩社員が横乗りし現場指導を行っていたが、ある日、入社しすぐ辞めてしまうこととなったCさんに退職理由を尋ねると、「横乗り指導をしてもらっている先輩Dさん(37歳)が会社の悪口を言っていて不安に感じたため」と言っていた。どうやらDさんは業務が多忙になりストレスも多く、「B社長は現場を分かっていないダメ経営者」「この会社はコンプライアンスゼロの会社」などと発言をしてしたことが判明した。
B社社長は顧問の社労士に相談し、「Dさんは出来れば辞めて欲しい、せっかく採用できた若手社員が続々と退職しているのはDさんの発言によるところが大きい」と要望したが、顧問社労士は、「Dさんを辞めさせることにはコストがかかり紛争のリスクある。まずは文書で指導する方がいい」として、「勤務改善指導書」にDさんの具体的な行動と改善して欲しい内容について記載して説明し、署名させることとなった。
B社長は「勤務改善指導書」をDさんに示したうえで、改善を促したところ、Dさんの言い分としては「横乗り指導しながら自分の運行をやらないと給与が減額となる」「B社長は指導業務を任せきりで自分の業務内容を理解しようとしない」との言い分であった。
B社長は改めてDさんの給与明細を確認したところ、指導係(リーダー)に昇格した月から給与額が3万円減額となっていることが判明、総務に確認したところ、「指導係は、リーダー手当はつくが、運行手当が減額となるため、給与は減額となります」という説明であった。
自社の給与テーブルを理解していなかったことにB社長は愕然としている。
⑵事例のポイント
経営者が自社の給与テーブル、昇給昇格の仕組みを理解していないために、昇格になった社員の給与が減額した、仕事は変わっていないのに役職手当がついたが、手当が減少し給与が減額となった、といった事態にしっかりと対応できていない会社が散見されます。社内のトラブルが発生した場合には社内の改革を進めるいい機会と捉え、規程類、制度などを見直すことが大切です。
2.対応策
問題がある社員であってもいきなり辞めさせようとするのではなく、まずは改善してもらうよう粘り強く指導する事が求められます。社員側に弁護士などの代理人が付いた場合、解雇補償などの金額が大きくなる場合があり注意が必要です。また、自社の給与制度、休暇の際の計算方法、出来高歩合給の内容などに関して経営者が内容を理解し、ドライバーから説明を求められた場合には丁寧に説明することが求められます。いろいろな性格のドライバーがいますが、中には非常に金額に細かい方や、奥さんが計算方法などに疑問を持ち質問をしてくるケースもあります。誠実な対応が必要です。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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