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ブログ・高橋 聡
第163回:働き方改革への対応(年次有給休暇5日義務化(3))
2019年12月10日
今年から働き方改革関連法が施行されています(【図1】)。そこで、働き方改革関連法への対応というテーマで法改正への具体的な対応策について解説してまいります。
今回は前回に続き、(年次有給休暇年5日義務化)への対応について説明します。
前号で、使用者側からの時季指定方式として「計画年休制度」「使用者からの時季指定(都度指定)」について説明いたしました。
今回は、有給休暇取得日の「給与計算」について解説いたします。有給休暇取得日の「給与計算」については経営者からの相談の多い項目です。有給休暇時の給与について労働基準法は3通りの計算方法を定めています。①平均賃金(過去3か月間における1日あたり賃金②通常の賃金(所定労働時間、労働した場合に支払われる賃金)③標準報酬日額(健康保険法で定める標準報酬日額。労基協定が必要)の3つで、実務上は①平均賃金もしくは②通常の賃金が採用されることが多いです。
①「平均賃金」で計算する場合、A(過去3か月間の賃金の合計÷過去3か月間の暦日数)、B(過去3か月間の賃金の合計÷過去3か月間の労働日数)×0・6を比較して「高い方」で計算する必要があります。
②「通常の賃金」では基本給等が「日給月給制」の場合は1日当たりの金額、「月給日給制」の場合は月額を減少させないこと(日割りカットしない)で有休時の1日当たり賃金額となります。
さて、運送業の場合、歩合給制が採用されていることが多いですが、有給休暇時の給与に関しては「歩合給」も計算対象とすることが求められていることが留意する必要があります。
給与制度が所定内給与+歩合給の場合、①の「平均賃金」方式であれば、賃金の合計に歩合給額が含まれるので、特段の別計算は不要です。②の「通常の賃金」方式に関しては有給休暇取得月の歩合給額÷総労働時間数×1日所定労働時間数の計算により歩合給の給与保障を法的には求められることに留意する必要があります。
実務上、歩合給の保障まで実施している運送会社は少数ですが、ドライバーの奥様、親御さんなどが労基署に相談に行き、支払うことを命じられるという事例もありますので、義務のあること自体は覚えておく必要があるでしょう。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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