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ブログ・高橋 聡
第165回:働き方改革への対応(時間外労働の上限規制(1))
2020年1月7日
今年から働き方改革関連法が施行されています(【図1】)。そこで、働き方改革関連法への対応というテーマで法改正への具体的な対応策について解説してまいります。
今回から、(時間外労働の上限規制)への対応について説明します。
「時間外労働の上限規制」は、これまで努力規定であった「36協定・特別条項」規定に関し法律に格上げし「罰則付き」とされたもので、大変大きな改正です。労働基準法は1日8時間、週40時間を法定労働時間と定めています。この法定労働時間を超過する場合は労働基準監督署に「36協定」(従業員代表との書面による協定)を締結・届け出する必要があり、協定・届け出する時間数は、運転職以外の場合は行政指導上の上限45時間、運転職は80時間あるいは100時間というように「改善基準」(拘束時間に関する基準で法的な強制力はない)を元に任意で設定し、急な需要の逼迫や季節要因の際への対応のための「特別条項」を利用し、事実上、上限なしの規制内容となっていました。
今回の「働き方改革」に伴う上限規制は、これまで事実上、青天井であった時間外労働時間に関し、強制力のある「法律」で規制し、違反の場合は「刑事罰」を適用するということなので、これまでとは全く異なる規制内容となる大改正となっています。
法施行スケジュールですが、大企業は2019年4月から、すでにスタートしており、中小企業は2020年4月から施行されます。具体的には中小企業の場合、2020年4月1日以降に始期を開始する36協定が新たな規制の対象となる、ということとなります。また、業種・職種により猶予措置が設けられており、運送業においては「自動車運転の業務」(ドライバー)への適用は2024年4月以降となり、運転業務以外の「管理者」「倉庫作業員」「事務員」などの一般職に関しては2020年4月からの適用となります。これは運送業「運転従事者」の労働実態を勘案した措置であり「建設業」等も同様に適用を5年間猶予されています。
さて、2020年4月からの規制内容としては月の時間外労働は原則45時間、年360時間以内に収めることが必要となります。45時間というと1日2時間で23日勤務すると超過してしまう時間数ですから勤務時間の長い「管理者」や「倉庫作業員」について、これを順守するのは実態として厳しいと感じます。年間の時間外時間数は720時間とされており、平均すると月60時間となりますが、月45時間を超過できる月数は年6回までとされているため毎月60時間としていても「法違反」となるので注意が必要です。
次号以降で詳しく上限規制の内容と対策について説明いたします。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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