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物流ニュース
貨物量減少が表面化 取引の「適正化」も影響
2020年2月28日
貨物量の減少が表面化している。直近の統計において、そしてトラック事業者の肌感覚においても、その傾向が鮮明になっている。その影響で一部では、運賃のたたきあいの状況も語られるようになった。働き方改革=生産性の向上を進めるための原資となる収入確保策に奔走するはずの、この時期のトラック事業者。その動きも止まってしまったかのようだ。
「2月から、トラックを1台減らすように言われた」。大手宅配会社の幹線輸送を担う、近畿地方のトラック事業者。数か月後には仕事が復活する見込みも同時に伝えられているとはいうが…。
先月末に国交省が公表した、昨年11月のトラック輸送統計(「トラック輸送情報」)によると、前年同月比で宅配貨物は約889万個、率にして2.4%減少した。特積貨物全体でも同約39万トン減少し、6.6%の落ち込みとなった。
貨物量の落ち込みと減車の関係について、減車を告げられた事業者は、「消費増税の影響もあるのだろうか。同業者でも減車を告げられているところがある」と話す。
フリーの4トン車が主力の近畿地方の別のトラック事業者は、「港湾地帯にある倉庫の在庫がカツカツになっている」と話した。
同社が扱うのは主に鋼材。輸入した在庫量が日ごとに減少しているというのだ。「武漢肺炎の影響で在庫が底を尽きてきているのか。長期化すると在庫がなくなり、生産活動やインフラ維持活動に支障が出てくる場面も出そう」。鋼材以外の貨物も軒並み「動きが止まっている状態」だという。
輸出入活動の停滞がもたらすこうした影響などについて、食材輸入に携わる別のトラック事業者が話す。「にんじんやごぼうなどの食材が中国から全く入ってきていない」
食肉なども同様だ。通関会社から食肉輸送を引き受けるトラック事業者は、「中国からのトランシップが入港しないため、オーストラリア産の食肉なども滞っていると聞く」という。
この事業者によると、輸入貨物の減少そのものは武漢肺炎の影響よりずっと早い、昨秋ごろからあった。「国内の商社が仕入れを控えているという話を聞く。働き方改革というか業務の適正化というか、従来は通関業者が荷主・商社に請求できなかった『デマレージ』などの諸料金を請求しだしたのが昨夏ごろ。『そんなに料金がかかるのなら大量購入のメリットがなくなってしまう』というのが、商社側の本音のようだ」
デマレージは、輸入したコンテナが一定期間以上コンテナヤードに留め置かれた場合に請求されるペナルティ料金。事業者によるとコンテナヤードへの留め置きは、倉庫に入庫する前の仮置き場所という位置づけも従来にはあったようで、荷主側の負担として可視化されていない部分だったという。
近年は、トラック(コンテナシャシー)や乗務員不足で、荷主が運びたいタイミングでの配車ができないことによるデマレージの発生も表面化しているようだ。
港湾統計によると、この事業者の拠点である神戸港の場合、昨年の1月から10月までのコンテナ貨物取扱量は約239万TEUで、前年同期比で1.9%の減少だったのに対し、11月時点では同2.5%減少。減少幅が大きくなっている。「商社による買い控え」の指摘と機を一にしている。こうした統計傾向は東京港など全国の主要港の統計でも現れている。
消費増税による買い控えやここに来ての武漢肺炎によるショック。要因はさまざま考えられるが、物量の減少は各事業者とも大きく気になるところだ。
ここ数年、トラック運送業界では乗務員不足、そしてそのために起こる「トラックはあるが運べない」現象で、輸送量そのものが伸びないことが起きてきた。そのための材料として「働き方改革」を、受け入れざるを得ない側面があった。まさに、「乗務員から選ばれる会社になろう」の掛け声のもとに。
事業者らの会合でよく耳にするのは、「また、運賃の下げあいをしている」という話だ。貨物量の減少が、「働き方改革どころではない」という姿勢に結びつくのも理解はできる。
運賃をこの30年間、下げ続けてきたのがトラック運送業界。否が応でもそれを余儀なくされた側面はある。しかし、運賃を再び上げる機運は、今回を逃してしまうと、もう再び来ないかもしれない。そうした視点も忘れたくはない。
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