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物流ニュース
企業活動を止めない 各社のBCP対策
2020年9月1日
近年、台風や豪雨が激甚化している。自然災害が起こった際に、企業活動を止めないためには、各社でBCP策定しているかが要となっている。また、今回の新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、社内のBCPを定め、見直す必要を再認識する出来事となった。BCPの重要性を認識し、取り組む組織や会社を取材した。
東京都トラック運送事業協同組合連合会(東ト協連、石川和夫会長、東京都新宿区)では、ヤマダ電機、日本ユニシスと協力し、東ト協連の会員向けに「東ト協連型災害ネット」の開発に取り組んだ。このシステムはインターネットを利用した情報共有サービスで、自然災害が起こった際に、従業員や取引先との情報交換に利用できる。
東日本大震災の際に、BCPの重要性を認識した野口茂嘉専務は、BCPに取り組む重要性を力説し、「準備が7割」と話す。社内で災害時の取り決めを行ったり、従業員が自分の家で防災に取り組むよう説明しなくてはならないという。
「そのためには、わかりやすく、実行しやすいBCP対応を定めるべきだ」との考えから、東ト協連ではかねてより、従業員向けのイラスト入り冊子の作成などを通しBCPの重要性を訴えてきた。同専務はまた、「自然災害のような、起こるか起こらないかわからないものに投資はしづらい。しかし、しっかりと対策をとることで、取引先や顧客からの信用につながる」と話している。
岩手県を中心に、東北で運送・倉庫・物流事業を展開する東磐運送(菅原良徳社長、岩手県一関市)では、自社のBCPへの取り組みを見直している。
菅原社長が実務を担うようになってから、東日本大震災が発生した。同社では、沿岸地域に輸送中だったタンクローリーが流されるなど大きな損害を受けた。「あの震災を経験すれば、BCP対策を忘れられるものではない」と、同社長は当時の震災の重大さとともに、BCPの必要性を指摘する。
同社ではまず、社員証に顔写真を加えた。そして、そこには「従業員携帯カード」という、災害があった際にとるべき行動が書かれた用紙が入っている。さらにBCPをはじめとする社内の品質に関する管理をする部署を中心に、定期的にBCPの内容を見直し、訓練を行うなど積極的に取り組んでいる。
昨年は、台風が東北を直撃するという予報もあった。そのため、「備える」という意味でもBCPは有効だと話す。「事故やクレームも同じで、防ごうとするには『これをする』と思い、やるしかない」との考えを述べた。
結城運輸倉庫(結城賢進社長、東京都江東区)は東北・仙台に拠点を持ち、東日本大震災でも被災し、甚大な被害を被った。また、昨年首都圏に上陸した台風で、千葉県にある拠点が被害を受けた。
同社は関東大震災の直後に創業し、震災で困った人々に、当時、馬で物資を輸送したという歴史がある。結城社長はそのことも踏まえ、奇しくも災害に縁深い同社には、「BCPの対策が必要だと強く感じた」と話す。
「東日本大震災の際は、通信も不安定であり、社内で各々が連絡を取り合おうと、各自でバラバラな行動を取っていた」とし、「当時は、それぞれが必死になって行った行動だが、平時に思い出してみると、無駄な行動も多かった。そうした教訓を忘れないためにも、BCPに取り組むことに決めた」と振り返る。
そして、従業員の半数から、当時の取った行動や感じた内容を募り、社内で冊子「ゆうき」にまとめた。その冊子には、当時の恐怖を感じた率直な気持ちや、データ管理に関する実務的なことが記されている。
同社では、年に1度の防災訓練、そしてBCPの見直しを始めた。「被災者としての経験がないと、災害を人ごとのように思ってしまう」と同社長。「自分は大丈夫だろうという人間の心理がある。災害はどこでも起こる」と話し、「知識でわかっていても、練習、訓練をしなくては、実際には行動できないだろう」と現在でも、BCPの訓練や見直しを定期的に行っている。また、現在は新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、感染症に関するBCP対応に取り組んでいるという。
BCPは一度取り組んだら終わりではなく、見直し続ける必要がある。災害が起こる前に、同業者が経験した得難い体験を参考に、自社でも取り組んでいきたいと、同社長は指摘している。
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