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物流ニュース
大手各社が実施 職域接種で現場守る、ワクチン3回目は情勢見極め
2021年12月1日
新型コロナの感染者は1日100人を下回るなど落ち着いているものの、第6波への警戒は依然続いている。現状、感染予防に有効とされるワクチン接種を2回目まで終えた人は約9692万人(人口比77.0%、11月25日現在)。3回目接種は12月1日に医療従事者から始まり、年明けには一般接種を開始。3月をめどに職域接種も実施される予定だ。コロナ禍でもライフラインを支えるトラックドライバー、中でも不特定多数のエンドユーザーと接触する宅配事業者は、現場の従業員を感染から守る手段の一つとして職域接種を実施した企業も多い。大手各社に話を聞いた。
郵便局の窓口や郵便物の配達業務などを行う日本郵便を擁する日本郵政グループ(東京都千代田区)では、6月21日から11月26日に職域接種を実施。全国の12会場で約4万6000人が接種した。なお、8月以降、協力会社の所属社員も接種対象に含め順次周知を行った。
同グループの広報担当者は「接種開始当初は、郵便配達や郵便局の窓口など直接お客と接する機会が多いフロントラインの社員を優先して接種を行った」と話す。3回目接種については政府の正式な方針が決定次第、実施可否を検討したいとしている。
ヤマト運輸(同中央区)は、対象人数などは非公表としながらも「ワクチン接種による地域の負担軽減と、社員が安心して働ける職場環境を整備するために職域接種を行った」(広報担当者)。また、佐川急便(京都市南区)でも、同社を中心とするSGホールディングスグループで職域接種を実施。接種状況は非公表だが、協力会社などにも積極的に接種を呼びかけたそうだ。
福山通運(広島県福山市)は、7月から9月に福山本社と東京主管支店の2会場で、希望する従業員とその家族、協力会社の従業員にも呼びかけ、各1000人を対象に職域接種を実施。また、自治体等と連携して拠点各地でも接種を推進してきた。3回目接種については現時点では未定だという。
なお、同社はワクチンを接種済みと一目で分かるバッジを作った。広報担当者は「感染症の拡大防止の取り組みを進める中で、お客により一層安全、安心なサービスを提供するために作った」と話す。紺色を基調に〝接種済〟と明記されたバッジで、対象のドライバーなどが10月中旬から着用している。
トラック運送事業者を束ねるトラック協会が職域接種を実施した例もある。鳥取ト協(川上和人会長)では、「昨年来のコロナ禍でドライバーへの差別や偏見とも言えるような事案が各地で多く発生した。当県でも長距離ドライバーに対して一時的な健康診断の拒否や子供の送迎、地域活動の参加を自粛するよう依頼されたなどとの声を聞いている」(前田裕明専務理事)。そうした事情も踏まえ、同協会では職域接種の検討に入ったという。
今年6月に全ト協から職域接種に関する情報提供があり、主管する県の通商物流課など関係先に相談すると、協会の体制や1000人という実施規模の目安、施設、医療体制、資材器材を整えるための当面の運営資金などさまざまな課題が浮かび上がり、この時点で協会独自の実施は難しいと判断。しかし、県や協会役員と協議を重ね「ダメもとで申請したところ予想外にも許可が下りた」という。
同専務は「初めてのことで課題ばかり。十分な準備もできないままに実施に踏み切ったような形だった。接種によるアナフィラキシーショックや副反応で運行に支障が出ては困るなど不安も大きかったが、とにかく業界のドライバーのためにということが一番大きかった」と振り返る。
接種は6月21日に開始したが、スタッフの経験や関係者との連携が十分に取れる余裕を持つ必要があるため、人数を100人に絞って実施。以後、毎週土曜日と日曜日に実施し、10月3日までの合計31日間に5671人に2回の接種を行った。なお3回目接種は、国や県の情勢、今回の職域接種の状況を勘案した上で判断をする必要があり、現状は白紙としている。
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