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物流ニュース
プロドライバーの健康管理・労務管理の向上による事故防止を考える
2023年7月19日
トラックなどの自動車運送事業の運転者の疾病により事業用自動車の運転を継続できなくなった事案として、自動車事故報告規則に基づき報告のあった件数は、令和2年286件、同3年288件と、高止まりの状況で、トラックは増加傾向にある。令和3年は、健康起因事故報告件数のうち3割が交通事故に至っており、さらなる低減が必要な状況となっている。
2013年から21年における健康起因事故の疾病別の内訳は、過去9年間で健康起因事故を起こした運転者2465人のうち心臓疾患、脳疾患、大動脈瘤及び解離が32%を占めている。
そのうち、死亡した運転者426人の疾病別内訳は、心臓疾患が55%、脳疾患が12%、大動脈瘤及び解離が12%を占めており、全体のおよそ4分の3を占めているという状況にある。国交省自動車局安全政策課の村上強志課長は「近年、健康起因と推察される事故は増加傾向にある。事故が発生すれば社会的影響は大きく、何としても減らさなければいけません」
「国交省では2015年から、産官学が連携して事業用自動車健康起因事故対策協議会を立ち上げ、健康起因事故を防止するために様々な対策を講じている」と話している。
国交省は、自動車運送事業における安全安心の確保に向け、スクリーニング検査の普及やその他運送事業者による健康起因事故防止対策の定着、ICTを活用した調査も行っていくという。
2016年度から毎年度、有識者や関係企業が事故防止対策の参考となる「プロドライバーの健康管理・労務管理の向上による事故防止に関するセミナー」を開催している。
今年は、三和運輸機工(中山慎社長、神奈川県川崎市)が「健康管理の変遷と睡眠時無呼吸症候群への取り組み」を発表したほか、バス会社が健康起因事故防止の取り組み事例などを紹介。
さらに順天堂大学大学院医学研究科の 谷川武教授が「プロドライバーにおける睡眠時無呼吸症候群スクリーニングの重要性」を、大原記念労働科学研究所の酒井一博氏も講演を行った。
酒井氏は「ヘルシーワークプレイスを業界の当たり前に~健康管理・労務管理の充実を起点として~」と題して、健康で安全な職場を実現すべきと話す。
そのためには先ず、事業者の努力が基本になる。基礎疾患(高血圧症、脂質異常症、高血糖症、肥満など)を持つハイリスクドライバーを把握して、受診勧奨を行う必要がある。
また、小規模事業場における産業保健サービスが手薄なため、小規模事業場に寄り添う産業保健サービスの仕組みを作り込むことが課題となっており、業界や荷主等と連携する必要がある。
二つ目は、働き方改革と改正改善基準告示を守る。睡眠は過労対策の特効薬となるが、睡眠時間を最低5時間以上、週2回以上6時間以上にするのは、働き方改革によって可能になる。
三つ目は、健康状態の改善に向け、生活習慣を変えるために、まずは体重管理と血圧管理から継続して行っていくことが大切で、最終的にその計測結果を生かすということが重要となる。
酒井氏は「最終的には、ヘルシーワークプレイス(健康で安全な職場)が業界の当たり前になることが望ましい」として、「働き方改革をきっかけにした業界独自の取り組みが期待される」としている。
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