Now Loading...
 
  • 物流ニュース

    トンネルで火災発生 そのときアナタなら 「国が決めてくれないと、我々で判断することは難しい」

    2024年1月17日

     
     
     

    事業用自動車の事故統計年報(国交省=今年3月)によれば、2021年に高速道路(自動車専用道を含む)で発生した重大事故は689件。原因の最多は車両故障(281件)によるものだが、火災事故も1割超の77件にのぼる。発生する地点にもよるが、そこがトンネルだった場合、深刻な状況を招くことは先の山陽道・尼子山事故、さかのぼれば1979年7月の日本坂トンネルが教訓として残る。先述した689件のうち約80%がトラックによる事故というデータを重ねれば、いかにリスクの高い状況で車両を運行させているかをドライバーだけでなく、会社ぐるみで考える必要もある。

     

    ■横すり抜け

    「トラックを長く使う事業者が増えているが、たとえばハブベアリングの交換をアドバイスしても『あまり遠くへ行かない車だから…』と言い訳するケースもある。先方が決めることだから仕方がないが、そんな事業者の依頼は断る」と、民間車検も手掛ける中国地方の整備業者。点検・整備に起因する火災が最多という行政データもあり、経営環境の悪化で車齢が延びる傾向を踏まえれば懸念材料だ。

    およそ4年前、トンネル内で自社の特大車両が燃えて一時、ドライバーが集中治療室に運び込まれた経験のある同地区のトラック経営者(40代)は「とにかく早く逃げろとしかいえない」と当時を述懐。そのうえで「タイヤ関係だと煙で気づく(のでトンネル突破も可能かもしれない)が、止まれば一気に火が出る。うちはエンジンだったのでその場で停止してしまい、一瞬で燃え広がった」と話す。

    一方、停止すれば後続車に追突されかねないこともあり、火災車両のわきをすり抜けていく危険な車両も存在する。「どの程度なら走り抜けるかの判断は現場に任せるしかないし、大した事故にならなかったときには『おたくのトラックだけが来なかった』と荷主のペナルティーが待っている」と食品を主力に運ぶ50代の経営者。「国が決めてくれないと、我々で判断することは難しい」と明かす。

     

    ■届ける義務

    国交省は2020年2月28日付で「異常気象時における措置の目安」を定めた。降雨や暴風、降雪状況のレベルに合わせ、最も深刻な「輸送することは適切ではない」までの3段階で行動の目安を示す。輸送を中止しないことで直ちに行政処分はないが、安全確保の措置を適切に講じないまま輸送したことが同省の監査で確認されれば行政処分に至ることもある。

    昨今の異常気象でトラック事業者が輸送の安全を確保できないにもかかわらず、荷主が強要してトラックが横転、水没する事態が発生。そうした事情を踏まえて全ト協が〝輸送中止の基準〟の策定を要請したもの。事前にリスクが把握できるか否かで考えれば、高速道路のトンネル火災を加えるのは現実的ではない。

    一方、トラック事業者には多様な災害に対応するBCP策定ガイドライン「荷主・物流事業者の連携による安全で強靭な物流の実現に向けて」(同省=今年3月)に基づく活動も求められる。「災害時にも通常業務の継続・早期復旧を図り、サプライチェーンを維持」「予見できる大雪や大雨などに適切に対応し、物流への影響を最小限に食い止める」「発荷主だけでなく影響力を持つ着荷主、物流事業者の元請け・下請けの関係も連携の対象」として近年、深刻化する異常気象でも“物流を止めるな”という責任を負っている。

     

    ■命をかけて

    2018年の西日本豪雨で各道路が通行止めになるなか、「工場のラインを止めることはできない」と荷主から要請され、道を探して目的地にたどり着いた女性ドライバーがいる。勤務する岡山市の運送会社によれば「担当者は運行中止を了解していたが、その荷主の本部は遠方にあり、被災状況の実感がなかった。彼女が走った直後に道路が崩れ、また崩れ…そんな繰り返しだった」(機械部品を扱う50代の社長)と振り返るが、現在は「高速が止まれば運行をストップ」との取り決めができた。

    ネクスコ西日本の管内では11月16日にも八本松トンネル・下り(広島県東広島市)で火災事故が発生。そのほか兵庫県姫路市の中国道(福崎~山崎IC間=同27日)で軽度の車両火災、名神高速・菩提寺PA付近(滋賀県野洲市=同28日)の本線上でも火災が起きて一時通行止めになる事態となったが、あらためて「そのときドライバーはどうすべきか」を企業レベルで考える機会が必要かもしれない。

     

    その時どう行動する? 平時にこそ確認を

    「自分の車が出火したら」「運転中に出くわしたら」――山陽道で相次いで起きたトンネル火災で〝もしも自分が〟と考えた人は多いだろう。特にトンネルは煙突のような形状で煙が充満しやすいうえ、開放した道路のようにどこにでも、すぐに避難できる状況ではない。普段から万一の場合にどう行動するかを確認しておきたい。

    各高速道路会社は、ドライバー向け情報サイトのなかで、トンネル火災に遭遇した際にどう行動するかをまとめて紹介している。このうち首都高(https://www.shutoko.jp/use/safety/tunnel/)は、3分半ほどの動画を掲載。「火災車両の追い越しは危険。その先は煙が充満して前方が見えず、追突事故を起こす可能性があるので、燃えている車の手前で停車する」などと具体的に解説している。

    阪神高速(https://www.hanshin-exp.co.jp/drivers/driver/column/column12.html)は、推奨する行動が会話形式で理解できるほか、現場写真やイラストを使って一連の流れが分かりやすい。なお、NEXCO3社と本四高速もそれぞれ安全運転に関するコンテンツ内に対応をまとめた動画やパンフレット(PDF)を掲載。JAFも公式サイト個人向けページのなかで対応を紹介。

    また、消防庁特殊災害課に尋ねると「当庁で特別なマニュアルのようなものは設けていないが、一般的には火災の現場では安全が確保できる範囲内で消防に通報し、可能なら初期消火に当たってほしい」と話している。

     
     
     
     

    この記事へのコメント

     
    1. JH1DDO says:

      ドライバーの安全のためにも完璧ではないかも知れないがブレイズカットとかの自動消火器をエンジンルームに付けてあげれないのでしょうか…
      記事内にある様に足回りなら気付くかもしれませんが、エンジンルーム内だと初期に気付きにくいでしょうし、分野が違うが国鉄も北陸トンネル火災を受け実験しトンネル外まで走り抜けさせた方が安全との結果が出てますので、走り抜けれないなら初期の消火がやはり重要だと思います。

      1
      3
    2. 1073 says:

      昔のトラックには消化器が装備されてたけど、今は無くなったね。

    3. 匿名 says:

      全て国もトラ協も逃げられるように出来てるね、違反したって荷が着いてしまえば何も無く大惨事となれば手遅れで荷主と運送屋の問題で終わり。そもそもその場の天気や状況なんて証明する術か無いのだから規制しようが法律化しようが気楽なもんだね。

    4. 元SD says:

      この前の山陽道のトンネル火災は、車検上がりのトラックだったみたいやけど、どうやって予知すればいいんだ?

      予知できたなら、ドライバーだって乗りたくないし会社だって運行させないはず。親会社がメーカーの株を持ってるくらいだから、大問題にはならないかな。

    コメントをする

    ※コメントを投稿することにより、利用規約をご承諾いただいたものとみなします。

    内容をご確認の上、送信してください。

     
     
  •  
  •  
  • 「物流ニュース」の 月別記事一覧

     
  • 物流ニュース」の新着記事

  • 物流メルマガ

    ご登録受付中 (無料)

    毎週火曜に最新ニュースをお届け!!

    ≫ メルマガ配信先の変更・解除はこちら