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物流ニュース
社保未加入の実情 厚労省と国交省の温度差に疑問
2016年10月24日
「労働基準監督署と国交省の温度差に疑問を感じている」と指摘するのは、国交省の監査で社会保険未加入を指摘された埼玉県の事業者。同社では法令順守に取り組むため、ドライバーに社会保険加入を勧めているが、全員加入まで至っていない。会社側としては本来、加入義務があることから強制的にでも加入させることもできるが、理由が理由だけに難しい実情もあるという。
同社が、その実情と理由を説明すると、労働基準監督署では一定の理解を示したものの、国交省では「違反は違反」として社会保険一部未加入と、事務的に処理をしたという。
本来の監督官庁が理解を示しているのになぜ、国交省は杓子定規にことを進めるのか。「加入を強制できるだけの説得力がないと、このままではずっと違反を指摘されてしまう」と、同社長はこぼしている。
死亡事故を起因として、4月に国交省の監査が入ったという同社は法令順守を進めていたことから、監査でも違反の指摘はほとんどなかった。しかし、ほとんどなかったとはいえ指摘される部分もあった。その一つがドライバー数人の社会保険未加入であり、違反は違反として、社会保険一部未加入として処分されたという。
「確かに、加入していないドライバーがいるのは事実なので、処分は仕方がない」と、同社長はいうものの、どうしても納得がいかない様子。
その理由は、加入していないドライバーの理由にある。そのドライバーらは年配者で、これまで厚生年金を支払ったことはないか、あってもごくわずかで、このまま定年まで働き続けても年金が支給されないことが確実なのだという。「いままで払わなかったのに、と都合のいい言い方にはなるが、返ってこないものに支払う者はいない」と話す同社長は、「こんな理由があるから会社側としても、促すことはできても、強制的に入れとは言えない」と苦しい胸の内を明かす。
そのため、加入できない理由を携え、同社長は労働基準監督署へ相談に行ったという。すると、監督署からの答えは「それは仕方がないので、ドライバーの意思で加入しないという趣旨の念書を取ってください」とのことだった。つまり、監督署は念書を取っておけばドライバー自らが入りたくないといっている社会保険に、会社が強制的に加入させなくていいということを言外に認めたのだ。
一方、国交省は同社を監査した結果、「社会保険一部未加入」と杓子定規に処分を下した。「法律で決まっているから、そのようにしたまで」とのことだが、「社会保険の監督官庁である厚労省は、理由が理由だと理解を示すのに、所管外の国交省は法律だからと処分を下す。矛盾しているのではないかと感じる」と、同社長は指摘している。
加入義務があるにも関わらず、これまで加入せずに払ってこなかった方が悪いのは当然だが、これまで加入しない者を野放しにしてきた行政にも責任の一端はなきにしもあらずだといえる。
「払っても返ってこないとわかっているものに誰が支払うのか」という同社長は、「せめて、これから加入する者にも、定年になったらその分だけ払い戻すといった制度を設けてもらえれば、われわれ会社側としても強制的に加入させることができるのだが…」と話している。この記事へのコメント
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