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物流ニュース
労働時間 守りたくても守れない…
2018年10月11日
社会的規制の強化やドライバー不足の観点から長時間労働の改善は、トラック事業者にとって喫緊の課題といえるところだが、そこには長年に渡って行われてきた慣習と、絶対的な立場でもある荷主の存在が立ちはだかっている。
重量物輸送を手掛ける東京都内の事業者では、労基署の巡回指導で、労働時間の改善に取り組み始めたというが、長きに渡って行われて慣習となってしまったドライバーの行為が、改善の壁となって立ちはだかっているという。
同社社長によると、朝に荷を下ろす仕事があり、そのために指定された時間があるが、これまでドライバーは、朝早くに出かけ、現地で仮眠を取って時間になって荷を下ろすということを行っていた。しかし、同作業では必然的に拘束時間が長くなり、改善告示に違反することになるので、その改善に取り組もうと、会社では朝の出発を遅らせる段取りを組もうとした。
ところが、ドライバーから猛反対を受けた。「ぎりぎりに行って余裕もなく、すぐに荷を下ろすということは、私にとってはストレスで、余計に事故につながる」との指摘だ。ドライバーには、早く現地に行って余裕を持って仕事をしたいとの思いがある。会社の指示で遅れた場合、個人の責任ではなく会社の責任だと説得しても、ドライバーは納得しなかった。
何かあったら会社の責任が問われると説明したが結局、「私の責任でいいから、このままのペースで仕事をさせてくれ」とのドライバーの言葉に押し切られた。同社では、「事故だけは絶対に起こさないでくれ」と懇願した上で、これまで通りに仕事を続けているという。「何かあった時には会社が責任を問われる」というリスクを承知で、同社では営業を続けている。長年に渡って、事故もなくやってきた今の形を変えることで、逆に事故が発生するというリスクを考える同社長は、断固たる覚悟で改善に望めないのが実情で、ドライバーに押し切られたのも、こうした背景があるからだと打ち明ける。
一方、絶対的な荷主の要請から長時間労働の改善に取り組めないという事業者もある。埼玉県の事業者では、長時間労働の改善の必要性を感じながらも、なかなか着手できていないという。1か月の拘束時間が、293時間を超えてしまうドライバーが数人は出ているのが実情で、「現状では、どうすることもできない」と、同社社長はこぼす。
同社によると、そもそも荷主からの依頼が労働時間内に終わらないような仕事で、どんなベテランがやっても12時間はかかる仕事だという。「ツーマンでやれば大赤字となり、会社が成り立たない。かといって、断れば仕事がなくなり、会社が立ちいかなくなる」と、苦しい胸の内を明かす。
残された道は運賃交渉しかないが、「運んでいる会社がうちだけではない中で、うちだけが交渉すれば間違いなく切られる」と話す同社長は、「我々のような零細には、自助努力では改善に限界がある」と本音を漏らす。事故などで行政の監査が入れば、間違いなく処分を受けるという同社では、違反を覚悟で今後も営業を続ける構えをみせる。同社長は、「中小で、本当に労働時間をしっかりと守れている事業者が果たして、どれだけいるのか」と疑問を呈した上で、行政に対し、「規制強化ばかりでなく、荷主側に対して、もっと理解させる動きをしてもらいたい」と訴える。
トラック業界にとって、長年の懸案でもある長時間労働の抑制は急務だが、簡単に改善できることではないのも事実だ。事業者に違反への罰則強化ばかりではなく、荷主への理解の浸透をもっと図るべきとの指摘もある。「好んで違反を犯す事業者はいない。だから、違反を犯さなくとも営業できる環境を整えてほしい」。これが、事業者の願いであり、また、事業者自身が取り組まないといけないことなのかもしれない。
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改善基準を守らない社員を監督するのは運行管理者の仕事でしょうに。
儲からないビジネスモデルとして間違っていたのなら手じまいにしてはいかがでしょうか?
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