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物流ニュース
なぜ進まぬ 天然ガス自動車の普及
2018年11月27日
日本の地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するため、2016年に閣議決定された「地球温暖化対策計画」。次世代自動車の普及と燃費改善、低炭素物流の推進が目標に掲げられ、その取り組みは今日も継続して行われている。そうしたなか、天然ガス自動車数は、2010年に4万台、17年に4万7000台と累計では増えているものの、普及は思うように進んでいない。なぜなのか、天然ガススタンドから、その原因を探ってみた。
天然ガス自動車の導入が進まない原因として考えられるのは、車両の導入費用の高さと燃料補給の不便さだ。特に燃料補給の不便さでは、「ガススタンドが近くにないと使いづらい」という理由で、車両の導入を見送った運送事業者は少なくない。天然ガススタンドは現在、全国に258か所に設置されているが、その多くが東京・名古屋・大阪に集中している。この3大都市圏を除いたエリアでは、利用する車両が少ないため、徐々にガススタンドが減ってきているのが現状だ。
当然、利用が少なければ採算がとれないため、閉鎖せざるを得なくなるわけだが、そもそもどのような戦略や基準でガススタンドが設置されたのだろうか。日本ガス協会(広瀬道明会長、東京都港区)天然ガス自動車グループの炭田和宏マネジャーは「当初は、戦略的に設置したというよりも、ガス事業者の敷地内や、車に充填するガスをスタンドに送り込む中圧導管が近い場所で設置が進んだ」という。ガススタンドがなければ天然ガス自動車は普及せず、需要がなければガススタンドの設置も難しい。こうした状況にあって、国は「国土強靭化アクションプラン2018」や「エネルギー基本計画」などで、天然ガス車両の普及を促している。
経産省では、大型天然ガス車に対して充填ができるスタンドで、なおかつレジリエンス性(自然災害からの迅速な復旧)という意味で耐震性がある中圧導管で供給しているガススタンドについては、補助金を付けている。炭田マネジャーは「ランニングコスト的には現在、天然ガスと軽油はあまり変わらない」とし、「天然ガスは、すごくクリーンな排ガスなので優位性があったが、ここ数年でディーゼルの頑張りで大きな差はなくなってきている」という。
「天然ガスの優位性はエコであることに変わりない」としながらも、「今年から米国天然ガス価格を反映したLNG(液化天然ガス)の日本への輸入が開始され、市場価格の安定化が期待されているほか、レジリエンスも天然ガスの方が強い」としている。実際に熊本地震の直後、天然ガススタンドは支障なく稼働。安定した燃料供給を実現し、災害後の物流に大きく貢献している。天然ガススタンドのガス管は、ほぼ全て中圧で供給されているため、東日本大震災や阪神大震災クラスの地震にも十分堪えられる構造となっている。
また、LNGを燃料とする大型トラックの開発を進めて来たいすゞ自動車(片山正則社長、同品川区)では、6月上旬から12月いっぱいまでの期間で、日本初のL(LNG)+CNGステーションを開設して、日本初の運送事業者によるモニター走行を行っている。LNGは、燃料のエネルギー密度が高く搭載効率が優れるため、大型LNGトラックでは1000キロメートル以上の走行距離を確保するとともに充填時間の短縮を実現した。同社は天然ガス自動車の普及促進に向けて、モニター走行で得られた情報を基に量産モデルの検討を進めるなど、天然ガス自動車の性能の向上に努めている。
日本ガス協会が取り組んでいる新しいテーマについて、金子大樹副課長は「大型天然ガストラックの普及では、特に東京・名古屋・大阪を結ぶ大動脈で利用されるものに注力していく」として、「いすゞの天然ガスを利用した車を、協会でもバックアップして普及させていきたい」と考えている。LNGのスタンドについては、「台数が少ない状況だと液化しているので、時間が経てば経つほど放熱して気化してしまう」とし、「LNGスタンドを増やすためにも、車両台数を増やして安定的に燃料を補充する体制をつくりたい」としている。
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