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物流ニュース
商標登録利用と注意点 ユーザーへ強い影響力
2019年7月4日
商標登録に端を発するトラブル事例は、いつの場合も世間を騒がせる。商標・ブランドとは「AといえばB社」といった風に、ユーザーへの強い影響力を持つことにもつながる。運送業界でも配送サービス自体に名前を付け、ブランド化している例があるが、悪用されてしまえば、自社のイメージを利用されるばかりか、逆に身におぼえのない悪評が広まる原因ともなる。今回は運送業界の商標登録と、商標を利用する際の注意点などについて話を聞いた。
引っ越しシェアリングサービス「Hi! MOVE(ハイムーブ)」を提供するグライド(荒木孝博社長、東京都新宿区)は現在、ハイムーブの商標登録を申請中。さらにシェア引っ越しなどにも商標登録を行っている。同サービスのロゴマークも申請中だ。荒木社長は「商標登録をしていれば、他社の広告などに同名のサービス・表記を利用できない。例えば、今以上にシェア引っ越しという名前が広まり、お客様が利用のためにインターネットで検索した際に最も早く目につきやすく、自社のサービスを見つけてもらいやすいというメリットがある」とし、さらに「自社サービスのみで使えるのであれば、シェア引っ越しといえばグライド、という風に、お客様の認知度も上げやすく、イメージも作りやすい。類似サービスとの間違いも起こりにくくなる」としている。現在もハイムーブは大きな広告費用もかけず、SNSを中心に話題となっており、実際にSNS経由での受注もあるという。
また同社では、ブランドイメージを守るための方針もある。荒木社長は「現在も全国で十数社のつながりがあるが、つながる引っ越し事業者との間で一番重視しているのは、事業者の皆様の仕事の品質」とし、続けて「ハイムーブの展開は高品質な現場の仕事を担ってくれる事業者の存在があってこそ。いくらハイムーブのデザインを良くしても、最終的なイメージを決めるのは現場での仕事。ハイムーブで、安くて簡単な引っ越しのイメージを作っても肝心の引っ越し業務の質が良くなければ、ハイムーブを通じて、つながりができた事業者の皆様全体に悪影響が出てしまう。根本的な部分として、やはりサービスの質は今後も重要視していく」と話している。
商標登録・特許に詳しい、みなかぜ国際特許事務所の矢島弘文所長は「商標登録では、先に申請し登録された企業が基本的に優先される。もし、何かしらの印、サービスの出所を自社であるとアピールしたいのであれば、使用前からあらかじめ商標登録の申請を行うことをお勧めしたい」と話す。同氏によれば、類似した名前の商標であってもサービス内容が違えば各社で別々に使用できるが、運送事業という括りの中での商標登録であれば、全て同じサービスと見なされてしまう可能性が高いとのことだ。
なお仮に、自社で使用し他からも認知されているものであるにも関わらず、他社から商標登録されてしまえば、その商標が企業のものとなってしまうケースについては、「無効審判の請求ができる。無効の請求については、例えば、一般に認知されていなくとも、業界内で認知されていれば、後からの使用者に対し利用を取りやめさせることができる」としている。
なお、登録のみで長年使用されていない商標が、自社が申請していた商標が類似していた場合については、「登録のみで使用されていなかったのであれば、不使用取り消し審判の請求が可能となり、自社の商標を新たに登録してもらえるよう働きかけることができる」としている。
また逆に、自社が他社から無効・不使用審判の請求を受けてしまう例として、同氏は、ロゴマークなどが類似していると判断されたケースを例示する。同氏は「どのような結果となるかは、最終的には審判官の判断に委ねられる。例えば、他社と同じ動物を使ったロゴであれば、文字の有無、ポーズや色の違いから類似性が判断される。ケースバイケースであるが、リスクヘッジのためにも登録の可否を事前に確認することを勧めたい。当事務所にも、登録申請前の類似性を確認するための調査依頼が多くある」と話す。矢島氏によれば、過去の事例としてロゴの印象に類似性が認められ、当時使用中だったロゴマークを全て変更せざるを得なくなった例もあるという。
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