-
物流ニュース
SOSサインを見逃さないで 全ト協事業「運輸ヘルスケアナビシステム」
2020年3月2日
健康診断の受診は、社員の健康状態を知る上で最も有効だが、運送事業者の多くは健診結果が伝える「SOSサイン」を見落としがち。健診後のフォローについて、大多数の企業で様々な理由から、できてない、または困っているのが現状ではないだろうか。また人材の高齢化が進む中、高齢者の継続雇用における「健康のものさし」を求める企業も増えている。「健康」というキーワードがますます重要となる昨今、事業主の責務をどう果たすべきか。全ト協事業で健診後のフォローを支援する「運輸ヘルスケアナビシステム」の業務委託を受けているヘルスケアネットワーク(OCHIS)の作本貞子副理事長に、フォローの重要性や、高齢者雇用における健康のポイントなどを聞いた。
事業者における健康管理推進上の課題として、最も多くの人が挙げているのが健診実施後のフォローだ。事業者が課題を抱える部分を業界全体でサポートしていく方法として、同ナビシステムは構築され、健康起因事故につながりやすいハイリスク者の可視化と、システムに基づく予防対策の推進を図り、サポートを実施している。ナビシステムではハイリスク者が一目で分かるほか、労働時間や軽度認知障害の疑い有無など、任意で事業者が情報を入力できる。「健診結果と、これらの情報を合わせて指導を行えば、中小運輸事業者の健康管理の質は格段に向上する。点呼時に薬の服用の有無などとともに、ナビシステムに蓄積された情報を活用していただきたい」と話す。
作本副理事長が、システムの活用でつなげてもらいたいとするのが、「労災二次健診」の受診だ。脳血管・心臓疾患の発症の予防を目的とした「労災二次健診」は、費用負担がなく、二次健康診断等給付を受けても、労災保険料が上がることがない。「ナビシステムで対象者が浮上すれば、受診の指導が容易になる。近年、『企業の健康管理はお任せください』といった健康管理代行サービスなども登場しているが、外部機関に任せきりにするのではなく、ナビシステムを活用するなどして、社員を大切に思う心と責任で事業者自身が社員の健康指導にあたっていただければ」と話す。
また、これまでOCHISが開催してきた両輪会(安全・健康管理ついて事業者が情報交換を行う会)で3度、テーマとして取り上げられ、業界内でも話題に上ることが多いのが高齢化問題。社員をいつまで雇用するか、一定の基準がないため判断が難しいとの声が聞かれる。
60代から高齢ドライバーと分類されることもあるが、作本副理事長は、それ以前の50代から健康対策を行ってほしいと話す。「早い方では50代から軽度認知障害(MCI)や内臓疾患などが見られる。また、身体以外にメンタルにも気をつけなければならず、定年後はモチベーションが下がるなどの問題も出てくる。健康状態をベースに機能チェックや体力テストなどの結果をポイント制にして総合判断を行えば、働き方や雇用延長有無などの1つの指標になるのではないか」と提案する。
高齢社員の健康対策は、若い社員への啓発にもなる。「高齢になればなるほど、身体年齢の個人差が大きくなる。健康対策は早すぎるということはなく、認知障害でもMCIであれば引き戻せる可能性もある。ナビシステムは、あらゆる世代の方が健康に働ける環境づくりのお手伝いができると信じている」と話す。
「健診受診率100%」をうたっている企業でも、フォローまで完璧に実施している例は少ない。今後、健康というテーマは企業経営にとってさらに重要視される。生活習慣のアドバイスなど一連のサポートも受けられるナビシステムは、中小運輸事業者の強い味方になるはずだ。
◎関連リンク→ NPO法人ヘルスケアネットワーク(OCHIS)
関連記事
-
-
-
-
「物流ニュース」の 月別記事一覧
-
「物流ニュース」の新着記事
-
物流メルマガ