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ブログ・小山 雅敬
190回:ドライバーの兼業・副業を認めるべきか
2020年9月1日
【質問】わが社では、人手不足対策としてダブルワークのドライバーを3人採用しています。また、社内からも副業で稼ぎたいとの声が出ており、今後、副業を積極的に認めていくべきか判断に迷っています。
現在、運送会社で兼業・副業のドライバーを雇用している会社は2割程度と見られ、全国各地に点在しています。長時間労働による過労運転を回避する観点から兼業・副業のドライバーを雇用していない運送会社が多いのですが、一部の会社では兼業のドライバーが大事な戦力になっており、「兼業を禁止したら仕事が回らない」と公言する経営者もいます。
また、「安い給料しか払えないので副業禁止にできない」と話す経営者もいます。法的には、労働時間以外の時間を、どのように利用するかは社員の自由であり、兼業に利用することも自由とされています(憲法22条「職業選択の自由」)。
ただし、会社との労働契約により、企業秩序維持や適切な労務提供確保の必要性がある場合に限り、一定の制約を設けることができます。制約要件には、例えば、「不正な競合の防止」「企業秘密の漏洩防止」などがありますが、運送会社の場合には、特に「社員の働きすぎによる健康被害や事故の防止」「長時間労働による業務への支障」などの観点が重要です。
そもそも運送業のドライバーには労基法とは別に、改善基準告示による厳格な労働時間管理が求められており、過労につながる兼業・副業を無制限に許可するべきではありません。やはり就業規則上の「原則禁止・許可規定」を維持したまま、社員の兼業・副業申請については、その内容と時間、職務への影響などを判断したうえで支障がない場合に限り許可する扱いが適当でしょう。
現在、働き方改革の中で兼業・副業を推奨する流れがありますが、今後、兼業・副業の労災認定の見直し(通算で認定)を契機に、損害賠償請求や残業代未払い請求、36協定違反などの問題が増加する可能性があります。ドライバーの兼業・副業に関しては慎重に対応する必要があるでしょう。
関与先企業の中には、農業や漁業に従事する人を閑散期などにドライバーとして雇用している運送会社や所定休日に運転業務以外の仕事に従事することを認めている会社があります。これらの兼業・副業は特に問題がありません。問題なのは、業務終了後に夜間の代行ドライバーとしてアルバイトをし、寝不足のまま翌日の勤務に就くケースです。労働時間を通算して改善基準告示に違反しないかが許可の判断基準になるでしょう。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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