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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(320)人材育成について(17)A社の事例(3)
2021年1月25日
賽の河原かシジフォスの神話か。一見無駄な努力の如く映る。しかし、よく考えてみれば人材育成とは、そうしたもので、この努力に耐えつづけていくなかで、〝地藏菩薩〟があらわれてくると信じる。A社の教育理念10か条は次の通りである。
⑴得意先は神様である
⑵得意先があって会社がある
⑶仕事に行く者は会社の代表なり
⑷現場の担当者は社長の代理なり
⑸仕事は会社と個人の明日の希望の光である
⑹個人の失敗は会社の失敗である。
⑺仕事は①頭を使う②身体を使う③愚痴を言わない
⑻仕事の順序①会社の指示②得意先の指示③個人の考え
⑼会社の精神①得意先を尊い②会社を敬し③上司を救う
⑽仕事を誇りにする
一つひとつを徹底していく。具体的に、噛んで含めていく。この教育理念10か条は、A社の経営哲学である。この実践をやりぬけば、必ず〝地藏菩薩〟が救ってくれると信じている。
A社の人材育成への取り組みは、働いている一人ひとりの心を掴むことにある。心を掴んで帰属意識を呼び覚まし、人間性を鍛えていこうとする。帰属意識とは会社のため、家庭のため、社会のために尽くそうとするものである。自己本位やわがままなタイプばかりだと、不平不満ばかりで「自分はいいけど周りが悪い」とチームワークを乱していく。人材教育の基本は他のために尽くしていくという帰属意識を人間性の奥深いところから蘇らせていくことだ。
〝自分が変われば周りが変わる〟と信じて、自己開発していく人間を育成するのが基本である。この人材育成の根幹をないがしろにして、単なるテクニックを教え込んだりしても身につかない。企業と一人ひとり人を成長させていく力にはならない。
シジフォスはなぜ繰り返し繰り返し重い石を背負っていくのだろうか。私が思うには、それが人生というものだからではないか。生きるという行為はそんなものではないか。重い石を背負うことを嫌がることは、生きることをギブアップするに等しい。努力と意志の積み重ね、継続なくして何の人生か。
賽の河原の小児はなぜ石を積み上げていくのか。石を積み上げても鬼が崩してしまうのに、なぜ故繰り返し繰り返していくのか。
人材育成の基本は、それが企業の使命であり、存在理由の証であると悟ることにある。表面的な利益追求に目を奪われて、人を育てるという視点が見えなくなって、はたして企業の存在理由はあるか。存在理由はない。やはり企業としての永続、成長を志として確立していくからには、教育理念をしっかりして人材育成に取り組むことだ。企業と働いている一人ひとりの成長を目指して日々努力するのは当然であり、そのプロセスで苦しみは、本当は喜びなのだとの意志を強くもつことである。 (つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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