-
運送会社
マイシン 辻直樹社長 「かつての苦い教訓を胸に」
2021年10月5日
「あんなことは、もう二度としたくない」。愛知県豊橋市に本社を置くマイシンで代表を務める辻直樹氏はリーマン・ショックを受けて多くのドライバーが退職に至った当時について、そう振り返った。
辻氏がマイシンへドライバーとして入社したのは平成7年9月、25歳でのこと。前職の佐川急便では、全国最優秀社員に選出されるといった華々しい実績を残してもいたが、新たな扉を叩いて環境を変えた。茶髪やピアスに髭など、当時在籍していたドライバーらを見て「正直、こんな運送会社もあるのだなと思った」と佐川時代では考えられなかった従業員の様子や身なりに驚いた辻氏だったが、新人研修の折に提出したレポートの中では早くも「この会社を変えてみせます」と力強い言葉を綴ってみせた。
6年半に渡ってハンドルを握って以降は、31歳で配車担当者として事務所入り。「常に売り上げのことを頭に置いていた」というドライバー時代で培った自身の経験やノウハウをスタッフらへ伝えていく過程では信頼関係を築きあげ、やがて課長になると入社当初から課題と感じていた身なりや服装の見直しを含めた社内改革を打ち出していった。
その後、常務を務めるまでに至った頃、リーマン・ショックによる大きな波が押し寄せる。「仕事がどんどんなくなっていく状況下で苦渋の決断だった」と話すリストラ敢行の折には、事故の多い者や高齢者を中心に15人の肩を叩き、退職者の中には辻氏自身が同社へ招き入れた知人が含まれていたことからも覚悟のほどが伝わる。幸い一連の流れにおいて大きなトラブルはなかったとのことだが、この時に味わった苦しみや痛みは社長となった現在の辻氏を支える原点となっており、またコロナに見舞われても堅実な経営を続ける同社の礎として記憶されている。
「今思えばもっとほかに方法があったのかもしれないが、当時の自分にはそれが精一杯だった。だからこそ、今の従業員にはそんな思いをさせないよう努めている」と辻氏は語り、これまでにおける自らの姿勢へ改めて言及。平成24年に社長へ就任してからのおよそ9年で会社は大きな成長と変化を遂げたが、「従業員らの要望をもっと実現したい」と力を込めた上で、「まだまだ道半ば」と気を引き締める。
そして今、目下の課題に関しては、コロナの影響を色濃く受けて従来の形を保ちづらくなってきた社内コミュニケーションの再構築をあげ、その推進へ意欲を見せる辻氏。「企業の成長は、人ありき」とする考えと、かつての苦い教訓を胸に人材育成のさらなる深化を静かに熱く見据える。
◎関連リンク→ 株式会社マイシン
関連記事
-
-
-
-
「運送会社」の 月別記事一覧
-
「運送会社」の新着記事
-
物流メルマガ