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    解雇すべきかどうか 危険運転のドライバー

    2012年8月23日

     
     
     

     行政による監査体制の強化や罰則強化が進み、トラック業界に変化が訪れている。死亡事故を起こせば特別監査が入り、悪質と判断されると違反点数は3倍となる。車両停止処分は当然のこと、簡単に事業停止や事業取り消しにまで至る。そんな行政の姿勢に事業者らは、コンプライアンスとドライバー管理の徹底を迫られている。埼玉県の事業者は、ドライバーを守るため、そして会社を守るために管理面の徹底を図っているが、これまでなら注意で済ませていた行為に対し、解雇の決断も迫られている。


     同社では毎日、仕事から戻ってきたドライバーが運行管理者に業務報告をし、一日の出来事を口頭で説明する。運行管理者はそれを聞いて質問するなど、コミュニケーションを積極的に取るよう心掛ける。ドライバーには口下手が多いという同社社長は、「毎日話をすることによって会社のことを理解し、自身の仕事にも責任感を持つようになる」と指摘する。
     先日、こうした取り組みを否定する問題に直面してしまう。社長が乗用車で出かけた際、2車線の道路で、対向車線を走る同社のトラックと出くわした。声を掛けようとした社長はすれ違いざまに、ドライバーを見て驚いたという。ドライバーが漫画を読みながら運転していたのだ。
     そのドライバーは、勤続10年のベテランだった。事故は少なく、仕事にもミスはない。社長も信用していたからこそ、わき見運転に対し、「裏切られた気持ちで悔しくて仕方がなかった」と振り返る。
     「いつも、あれだけうるさく言って取り組んでいるのに、浸透していなかったと思うと情けない」と嘆く社長は、このドライバーを解雇するか否か決断を迫られている。
     「これまでなら厳重注意で済ませていたが、今は危険運転で死亡事故を起こすと監査が入り、会社の存続にもかかわる。厳重注意で済ますには安易すぎる」と話す。日ごろ厳しく言い、そして厳しくしている中で許してしまえば、「許してもらえるんだという甘い環境を社内に作ってしまうことになる」というのだ。
     ドライバーは反省をし、継続して働きたい意思を表すとともに、解雇など、どんな処分でも従うとしている。今後の会社のことを考えると解雇すべきとの気持ちを固めているが、一方で、ドライバーの生活を考えると決断も鈍るという。ドライバーには妻子がある。今、解雇されればどうなるか。同情の念を消し去れない。
     幸いにも事故は起こしておらず、わき見運転も社長が見つけただけだ。また、普段もわき見運転をしているという証拠もない。「一度目は厳重注意で、同じことを繰り返せば解雇というのが一般的なやり方」との理解は示すものの、「死亡事故を起こしても、行政は一度目だから特別監査はしないとはならない。行政の対応が厳しくなった以上、我々も会社を守るために厳しく対応せざるを得ない」と本音を漏らしている。

     
     
     
     

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