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ブログ・高橋 聡
第228回:令和時代の運送業経営 労務トラブル実例編(24)
2022年9月26日
【労務トラブル実事例編】24
「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウイルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。今回も前回に続き、運送会社で実際に発生した「労務トラブル実事例」とその対応策について説明してまいります。
1.労務トラブル実事例
(1)トラブル内容
神奈川県所在の運送会社A社(社員数100人)では、当日の無断欠勤でシフトに穴をあけるドライバーBさんに対し、上司であるCさんが強い口調で「チームで対応してるのだから状況を考えろ、子どもじゃないから分かるだろ」などと指導したところ、精神的に落ち込んだドライバ―Bさんは「悪いのは自分であるが、必要以上に強く怒鳴られ精神的苦痛を感じている」として、労基署に相談に行ったため、調査が入っています。埼玉県所在の運送会社D社では、お客様から度々クレームを受け、2か月間で3回の構内バック事故を起こしたドライバーEさんに対し、所長であるFさんは他のドライバーの前で「Eさんはドライバー失格、バカ野郎だな、他の仕事の方が向いているよ」という発言を大声でしており、ドライバーEさんはその怒鳴り声を録音し、外部ユニオンに相談し、ユニオンから「団体交渉」を要求されています。
千葉県所在の運送会社G社では、他のドライバーの休暇取得により急遽休暇ドライバーの運行も代替え対応することとなり、その日の運行が16時間となってしまったドライバーHが、SNSで「〇〇運送、このクソ会社、殺す気かよ」と自分の日報をSNSで投稿したため、社長が強い口調で注意したところ「パワハラだ!」と言っています。
(2)事例のポイント
2022年4月から中小企業においてもパワハラ防止法が施行されています。パワハラ防止法とは、改正労働施策総合推進法の通称で、パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置が企業にはじめて義務付けられたものです。同法ではパワハラを、
①優越的な関係を背景とした言動であって
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③労働者の就業環境が害されるもの
これら3つを全て満たすものと定義しています。具体的な行動例としては、A.身体的な攻撃、B.精神的な攻撃、C.人間関係からの切り離し、D.過大な要求、E.過小な要求、F.個の侵害の6つが挙げられています。
パワハラの法制化を背景として中小運送業の現場においても業務指導かパワハラとの線引きが難しい事案が発生しており、注意が必要です。
2.対応策
必要な業務指導はしっかりと実施すべきです。同法において、ハラスメント相談窓口を設けることが義務化されました。迅速かつ適切な対応ができるよう、相談者のプライバシーを確保したうえで、面談だけでなくメールや電話、手紙など相談しやすい環境を整えましょう。受けた相談はプライバシーの保護に注意したうえで記録し、今後の参考として管理しておくといいでしょう。関連記事
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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