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運送会社
松興物流 AEDを30台導入、緊急時の人助けに
2019年10月18日
リコーが販売する自動体外式除細動器AEDを30台導入した松興物流(茨城県結城市)。食品や家電の配送を手がける同社が、なぜトラックにAEDを搭載するのか―。松島順一社長に話を聞いた。
阪神淡路大震災や東日本大震災の際には支援物資を運んだという同社。同社長は、「『物を運ぶことはできる。もっとできることはないか』と考え始めたのがきっかけ。様々な場所を走るトラックは、いざという時の人助けになるのではと気付いた」と振り返る。
「ただAEDを搭載するだけでは意味がない」と、同社では3か月に1度のAED研修を継続して行う予定。「ジャッキ操作やチェーンを巻く練習などにも通じるが、普段の積み重ねが重要。AEDも使い慣れていないと、いざという時に対応できない」。
また、一部で話題になっている男性が女性に対しAEDを使用した際の問題についても対策を講じている。「救急隊員でも、女性の服を脱がすことには抵抗があると聞く。そこで当社では、着衣のままの女性にAEDを使用できる方法を研修で学んでいる」という。「技術的なことはもちろんだが、周囲に集まってきたいわゆる野次馬を巻き込み、指示を出したり、心臓マッサージの交代を頼むなど、『みんなで助ける』ように促す」。
AEDを導入したことで、ドライバーにも変化が見られるという。「AEDに関する話題が増えた。みんな真剣に講習を受け、自主的に『もっと学びたい』と声を上げてくる。最初こそ、『できない』といった不安の声も聞かれたが、いまでは自信を持ってドライバー全員が使用できる」と胸を張る。
「そんなドライバーを守らねばならない」と同社長も奮起。「点呼時に体調が悪そうなドライバーがいれば、すぐに病院に行かせるなど、無理して走らせないことは徹底してきた」と、これまでも社員の健康管理には真摯に取り組んできたという同社。「来年からは、脳と肺のMRIを健診に組み込むことを決定した」という。
松島社長は、「口だけで『健康管理を』と言うのではなく、きちんと社員を守っていく。トラックの設備投資と同様に、社員の健康にも投資が必要」と持論を展開。「AEDは他人を守るものだが、ドライバーのことも守らなくては」。
配送車両へのAED搭載について荷主の反応は、「特に大手は『素晴らしい』と非常に好意的」だという。「配送を止めても構わないから人命を優先するようにと言われている」とも。
相次いで報道される痛ましい自動車事故に胸を痛めているという同社長。「AEDを積んだトラックが近くを走っていれば、助けられた命があったかも」とし、「積極的に当社の取り組みを発信し、もっと大きな波になれば、全国の運送会社がAEDを積んで走るようになるかもしれない。かけがえのない命を少しでも救えたら」と、未来を見据え、熱く語った。
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