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ブログ・経営承継支援
第11回:「物流会社のMA全般で財務の観点から論点になりやすい点」
2020年12月15日
皆様、こんにちは。経営承継支援M&Aコンサルタントの村橋秀一です。
M&Aでは、通常、買い手による調査(デュー・ディリジェンス=DD)が実施されますが、中小企業にとっては買い手・売り手双方にとって初めての経験である場合が多く、戸惑われる方も少なくありません。今回は、財務DDの観点から、「論点になりやすいポイントと対策、M&Aするにあたって準備できる事項」を解説します。
そもそもDDとは、ある企業が他の企業や事業を買収する際に、その企業にどのような問題点・リスクがあるかを調査し、買収するのに適した会社であるかを分析・判断することを言います。弁護士による「法務DD」、公認会計士による「財務・税務DD」が通常行われますが、今回の解説は後者の観点からとなります。
まず、財務DDでの検討事項のうち特に重要なものは、①粉飾決算の有無②回収不能債権・滞留棚卸資産の有無③簿外債務・潜在的債務の有無④オーナー・役員の費用の私的利用、の4点です。
特に③は従業員への未払い残業代や従業員が現在時点で仮に全員退職した場合に支払う必要がある退職金の額、訴訟等で支払う可能性がある賠償金の額などが該当します。
これら①~③は、買収価格の減額要因となりますが、買い手への開示が遅れれば遅れるほど心証を害しますので、あらかじめ事前に正直に伝えておくことが重要です。
④の費用の私的利用は、その事実を伝えないと、買い手は実態より低い利益水準で買収価格を検討してしまい、提示価格が低く見積もられる可能性がありますので、早い段階で伝えておくことが重要です。
財務の観点でのM&Aへの事前準備としては、「財務書類の整理」が挙げられます。具体的には、PDF資料の準備(法人税申告書・勘定科目明細・固定資産台帳・株主総会議事録・定款・株主名簿等)、エクセルファイルの準備(月次試算表・総勘定元帳・製品別売上・取引先別売上・仕入内訳等)が該当します。
これらはDDを受けるにあたっての入口となる資料であり、適切に準備することができなければ、M&A自体が破談になってしまう可能性すらあり留意が必要です。
中小企業では、会計士・税理士に各種財務数値の作成を完全に丸投げしてしまっているケース、重要書類を司法書士等に預けて自社で管理していないケースが散見され、その場合にDDプロセスが難航する場合が少なくありませんので、可能な限り事前準備をしておくことが望ましいでしょう。
村橋 秀一
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筆者紹介
経営承継支援
価値をつなぐ、想いをつなげるM&A
中堅・中小企業の円滑な事業承継のためのコンサルティング業務と中堅・中小企業の継続・発展に資するM&A仲介・助言業務が得意。
https://jms-support.jp/村橋 秀一 (会計士)
2006年、立命館大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格し、監査法人入社。上場企業・外資系企業を中心とした法定監査に数多く携わる。2011年、東京大学大学院を修了後、監査法人を退職し、大手コンサルティングファームに入社。M&Aアドバイザリー部門にて、上場企業から中堅・中小企業に至る様々なタイプのM&A案件、バリュエーション案件、財務デューディリジェンス案件40件以上に関与。2014年、大手証券会社に入社、課長に就任。日本国外を対象としたM&A案件をはじめ、国内大手インフラ関連企業の再編案件等、多数の大型M&A案件に関与。2017年、当社にパートナーとして参画。 -
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