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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(294)人材育成について(9)事例(1)
2020年6月22日
・成功体験を積み重ねる
今まで、できないことができるようになるのはうれしいもので、いわば成功体験の積み重ねは人材育成のポイントである。意欲のない前向き発想でないタイプは、どうして落ちこぼれたのか。それは失敗、挫折の繰り返しで「どうせダメだ。わたしには無理だ」と思い込んでしまっているからだ。
したがって、この意識改革が人材育成にとって大切である。失敗、挫折の連続で根強いコンプレックスがある。前向きになろうという自発性が、このコンプレックスにさえぎられているわけだ。
・A君の成長
A君は、食品会社の製造現場に勤める28歳の青年である。学歴は中卒。A君は今、生き生きとして働いている。この成長のきっかけは、どこにあったか。入社して十年くらいは、A君の評価は低かった。動きが鈍く物覚えも悪く、読み書きも苦手であったからだ。ノロマのA君として社内の評価は一致していた。その頃のA君は仕事についても朝からボーッとしていて無表情で生気がなく、いつも「コラ、ノロマ。なにしている。また失敗か」と、上司に怒られてばかりいた。A君も、たび重なる失敗に慣れてしまって、いくら怒られても堪えないというか、平然としていた。上司も諦めてしまって「どうせこんなきつい職場には、A君のような人間しか入ってこないだろう。いないよりはいいくらいの感じでいこう」と悟りを開いてしまった。
いつのまにか、いるのかいないのか目立たない無気力な男として、A君はみられるようになった。職場での技術取得研修でもテキストを読み合うわけだが、A君は満足に読めないので、いつの間にか出てこなくなった。
このA君が変化した。きっかけは25歳の時だ。「A君はダメだ」と職場のみんなが思っていたが、工場長が変わって新しい工場長が来た。新工場長はA君の無気力に対して諦めなかった。朝は顔を見ると、「おはよう」と明るく声をかけ、なにかと、ちょっとしたことで話しかけてきた。
工場長「A君、今度の日曜日、ソフトボール大会をするけど参加しないか」。A君「はあ、ぼくはソフトボールが下手ですし、行きたくありません」。こうした働きかけを積み重ねて新工場長はA君との信頼関係をつくっていった。
A君が好きなのは走ることである。中学時代は一生懸命走っていた。工場長はA君に走ることを勧めた。就職してからA君は走ることをやめて、体重も30㌔太ってしまった。
工場長「30㌔も太って75㌔になっているから、みんなからノロマと言われるんだよ。毎朝30分ジョギングして減量したらどうか」。熱心な工場長の勧めでA君は、自分が走ることが好きで黙々とランニングしていた中学時代を思い出した。走る最中はつらいけど、走り終わった時のさわやかさを思い出した。 (つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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