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ブログ・小山 雅敬
197回:告示された「標準的な運賃」の使い方
2020年12月8日
【質問】先日、国交省から標準的な運賃が告示されましたが、コロナ感染拡大の渦中にあり、荷主に対する運賃交渉ができる環境ではありません。標準的な運賃の使い方など今後の取り組み方について教えてください。
4月24日に国交省から「標準的な運賃」が告示されました。これは2018年12月の改正貨物自動車運送事業法により、2024年3月までの時限措置として設けられた制度です。2024年4月からドライバーに時間外労働上限規制(年960時間)が適用されることから、労働条件の向上を図るための緊急措置として導入されました。画期的な告示でしたが、運悪く告示の日がコロナ禍で経済が急激に減速した時期と重なり、運送会社の現場では、いまだに本来の活用ができていません。
しかし、一部の運送会社は、このような状況下においても、荷主に対して取引条件の見直し交渉を継続的に行っています。「今の運賃は国交省が算定した標準運賃の半分の金額ですよ。御社もコロナで厳しい状況でしょうが、当社も人が集まらず大変です。貴社の物流を安定的に維持するためにも、この状況が落ち着いたらぜひ、ご検討ください」
荷主も厳しいこの時期に「標準的な運賃」を使って要望を継続する意味は、①人手不足や現場の労働環境などはコロナ前後で何も変わっていないこと②コロナ禍中で散見される運賃低下の動きを未然に防ぐこと(過去の苦難の体験を再現しないこと)③運賃の見直しがすぐにできない場合は、待機時間の改善などコロナ禍で荷動きが減少した時期に取り組みやすい改善から実行してもらうこと——などを明確に伝える意図があります。
なお、具体的に荷主への交渉に活用するためには、告示された「標準的な運賃」を自社の状況に置き換えて、どの程度の金額が標準的な運賃になるのかを試算しておく必要があります。例えばバン型車の2㌧、4㌧、10㌧、トレーラ以外の車種、および冷蔵冷凍車以外の車種、また架装や車両価格の違い、荷役作業の特殊性の違いなどを踏まえて、自社の場合に置き換えると、どの程度原価が増え、どの程度の運賃を要望するのが妥当な金額なのかを把握しておく必要があります。今後、原価の算定基準などが明示された際には、各社における標準的な運賃を試算しておきましょう。標準的な運賃は賃金水準や償却期間、実車率など、コンプライアンスを順守した場合に本来あるべき姿で計算されており、健全経営のためには標準的な運賃に近づけていくことが大変重要です。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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