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ブログ・小山 雅敬
200回:同一労働同一賃金施行前に賃金体系を全面改訂した事例
2021年2月2日
【質問】来年から規制が始まる「同一労働同一賃金」への対策や2024年からの残業時間上限規制への準備を進めるため、現在の賃金制度を全面的に見直して貢献度重視型の賃金体系に変更することを検討しています。運送会社における改定事例があれば教えてください。
来年の4月から中小企業でも「同一労働同一賃金」の法規制がスタートします。この法律は正社員と非正規社員(短時間労働者、有期雇用社員、派遣労働者など)との不合理な処遇格差を禁止しています。
「業務内容」や「責任度合」「職務や配置の変更の範囲」などの観点で、両者に相違がない場合は均等の処遇、相違がある場合にも均衡のとれた処遇を求めています。
また、会社に説明義務が課せられるため、現在不合理な格差が存在している会社は法施行日までに解消しなければなりません。特に「賃金」に関しては、個々の手当ごとに妥当性を判断されるため、支給の有無や金額などに不合理な手当格差を設けている会社は、損害賠償を請求される恐れがあり、見直しが必要です。
現在の制度を見直す場合、該当する手当などを維持したまま同額の支給に是正する方法がありますが、一方で「そもそも現在支払っている手当は本当に必要な手当なのか」を考え直し、経営方針に合致した賃金体系への全面改定を選択する会社もあります。
例えば、皆勤手当や無事故手当、食事手当、家族手当、住宅手当、通勤手当など、職務内容に無関係ながら今まで当たり前に支払っていた手当を「生産性や貢献度の高い社員に報いる手当だろうか」「賃金の分配は本当に公平で適正だろうか」という観点で再検討する動きがみられます。
業務内容に無関係な手当を整理して、職務の貢献度に応じた「業績給体系」を導入することで、生産性向上に対するモチベーションを高めたいと考える会社が最近増えてきました。時間ではなく職務遂行度で賃金を決めるため、労働時間を短縮しても手取り額が減少せず、時間短縮を進めやすい利点もあります。
例えば、地方都市に所在する運送会社A社は、正社員に支払っていた家族手当と無事故手当、通勤手当を全て廃止し、その原資を「新業績給」に移行しました。非正規社員も同様の体系に変更しました。賃金改定時には既得権の維持と激変緩和を目的に、旧手当の金額を一定期間保障することで全社員に同意を得て実行しました。これにより、従来存在した不合理な手当格差が解消されるとともに、社員の日常の仕事ぶりが生産性を意識したものに変化し、無駄な残業時間が目に見えて減っていきました。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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