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ブログ・小山 雅敬
201回:事故を起こした社員に対する賃金への反映方法
2021年2月16日
【質問】「働きやすい職場認証制度」の申請を機に、事故賠償金制度の見直しを行っていますが、修理代の本人負担を廃止した時に事故が増加する懸念があり、どのように変更すればよいのか悩んでいます。他社の例などがあれば教えてください。
トラック運送業において、事故を発生させた従業員に対する賃金への反映方法は各社各様ですが、修理代などについて一部本人負担を求める制度を設けている会社が約半数程度存在します。よく見られる制度は、①保険免責額以内の実損額は本人負担とし、それ以上の負担は求めない②修理代などの実損額について一定額の月額負担金を定め、数か月にわたり給与から「事故分担金」として徴収、などの制度です。
ただし、労基法により違約金や損害賠償の予定は禁止されており、あらかじめ分担金額を決めておくことはできません。この問題は労使トラブルになることが多く、また今般申請が始まった「働きやすい職場認証制度」の必須項目にもなっていることから、見直しを検討し始めた会社があります。現行の制度を撤廃すると事故が増加するのではないかと懸念する会社もありますが、制度を廃止した途端に事故が増加した会社はありません。
ここで重要なのは事故賠償金制度の廃止と評価制度とは区別して考えることです。「安全」は運送会社の命綱であり、全社員が常に意識すべき最重要事項です。安全行動の遂行状況を正しく賃金に反映することは絶対に必要であり、事故の有無や無事故の継続状況を評価して賃金に反映すべきです。月例賃金でも賞与でも結構ですが、常に意識してもらうためには月例賃金に毎月反映する方が効果的です。
なお、事故による本人負担は望ましくないのですが、労基法に抵触しない範囲で一部残した方が良いケースもあります。
例えば、実際の事例で、あるドライバーがスピード超過の無謀な運転で人身事故を起こしたことがありました。経営者が本人から事故時の状況を聞いたところ、「社長、会社は保険に入っているのだから問題ないでしょう」と全く反省の態度が見られません。社長は「事故を起こしたくて起こす社員はいないので賃金には一切反映しない」との考えでしたが、「従業員の中には、自分のことしか考えない者がいる」と再認識し、安全意識が欠如した一部の社員に対して適用可能な制度が必要だと考え直しました。
法律上、あらかじめ賠償金額を決めておくことはできませんが、事故発生後に実損額や過失の度合に応じて損害額の25%程度までの負担を本人に求めることは可能です。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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