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ブログ・野口 誠一
第63回:倒産防止第13条・利他の心を持つ
2004年7月13日
再起の条件15か条」の第14条は「利他の心を持つ」である。利他の反対は利己、自分だけの利益しか念頭にないことを言う。この利己的現象はバブル崩壊この方、イヤというほど目にしてきた。消費者の利益や社会的危険を無視し、自社の利益のみ追求した結果生じた、企業不祥事の続出がそれである。
ようやくここへきて景気が持ち直しつつあるなかで、そうした悪弊も是正されるかと思いきや、利己的企業不祥事はいっこうに後を絶たない。鳥インフルエンザによる鶏の大量死を目の前にしながら、食肉用として出荷し続けたり、狂牛病対策として国が行った国産牛肉買い取り事業を悪用し、大量の輸入牛肉を混入して数億円をだまし取ったりと、悪質きわまりない。
一方、大企業も負けていない。西武鉄道による総会屋への利益供与事件、三菱自動車によるトラックのタイヤ脱落事故、森ビルによる六本木ヒルズの回転扉事故と枚挙にいとまがない。これらはすべて「利他の精神」の欠如がもたらした不祥事である。過去に同じ事故を何十回となく繰り返しながら、死者が出るまで対策をとらなかったというのは、怠慢というよりれっきとした犯罪である。利他の精神を忘れた企業に明日はない。
昔から近江商人の間には「三方よし」という理念があった。売り手と買い手の両者が納得すればそれは「双方よし」だが、それだけでは十分とはいえない。近江商人が行商の先々で地元に受け入れられ、地元もまた近江商人を必要とする関係ができたとき、「世間よし」が加わり三方よしとなっていく。いまで言えば「良き企業市民たれ」ということであろう。自分の利より先に相手の利を優先するのが利他の精神である。心学の祖・石田梅岩は「商いとは先も立ち、我も立つものなり」と言っている。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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