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ブログ・高橋 聡
第189回:令和時代の運送業経営 同一労働同一賃金・最高裁判決への対策編(1)
2021年1月7日
【同一労働同一賃金・最高裁判決への対策】①
今回より特別連載として、最高裁より出された「同一労働同一賃金」判決について、その内容と中小運送業における対応策などに関し解説してまいります。まず、判断に共通している基準、枠組みと「賞与」「退職金」の考え方を取り上げます。
1.同一労働同一賃金
同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者(いわゆる正社員)と非正規労働者(いわゆる契約社員、パート・アルバイト社員など)の間で、同じ仕事をしているのであれば雇用形態に違いがあっても賃金(基本給・各種手当・賞与など)や福利厚生(慶弔休暇・病気休職など)など、労働条件全般に対して不合理な差を設けてはならない、という考え方をいいます。コロナ禍の影響を受けるなか、中小運送業の経営は厳しい状況にありますが、最高裁判決を踏まえる必要があり、その影響と対策を解説してまいります。2.最高裁で示されたもの
⑴共通する判断基準…平成30年の「ハマキョウレックス事件」「長澤運輸事件」に加え今般、「大阪医科薬科大学事件」「メトロコマース事件」「日本郵便(東京・大阪・佐賀)事件」の最高裁判決が出されました。それぞれの判決に共通する判断基準として、①正社員と有期雇用者の格差の原因となっている労働条件の性質や目的を考慮、②性質や目的を踏まえた諸事情を考慮、という2点があげられます。中小運送業の給与制度について、今後は、この観点で有期雇用者への処遇を検討していく必要があるでしょう。⑵賞与、退職金について…実務上の影響が大きく関心が高いものとして「大阪医科薬科大学事件」では「賞与」について、「メトロコマース事件」では「退職金」について争われました。①賞与―賞与に関しては、性質として「労務の対価の後払い」とされ、目的は「有為人材確保」(正社員人材の確保)とその「定着」とされ、正社員は有期契約社員より、業務内容の難易度や責任の程度が高く人事異動もあったため、格差は不合理ではない(有期契約社員に賞与を支給しなくていい)と判断されています。②退職金については、性質は「労務の対価の後払い」「継続勤務に対する功労報償」等とされ、目的は賞与と同様に「有為人材確保」とその「定着」ということで、格差は不合理でない(有期契約社員に退職金を支給しなくていい)と判断されました。
両判決とも実在の会社事例に対する判決なので、中小運送業において(同一労働となっている)有期契約社員であっても賞与・退職金は不要といった判断ができるというものではなく、実際の処遇、労働条件によっては支給が必要となる場合があるので注意が必要です。
次号では諸手当の支給について「日本郵便事件」などを解説します。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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