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  • ブログ・高橋 聡

    第190回:令和時代の運送業経営 同一労働同一賃金・最高裁判決への対策編(2)

    2021年1月21日

     
     
     

    特別連載として、最高裁から出された「同一労働同一賃金」判決について、その内容と中小運送業における対応策などに関し、解説してまいります。

    今回は、最高裁判決・「日本郵便事件」での「家族手当」「住宅手当」など諸手当の支給について示された考え方を説明します。

    1.諸手当の支給について
    今回の最高裁判決で賞与(大阪医科薬科大学事件)、退職金(メトロコマース事件)については会社側が勝訴しましたが、日本郵便事件において「住宅手当」や「扶養(家族)手当」などの諸手当については、一転して会社側の敗訴が確定しました。

    平成30年に出された「ハマキョウレックス事件」で手当は、通勤手当、皆勤手当、給食手当、作業手当、無事故手当などについて趣旨・目的を個別に考慮し、有期雇用者などにあてはまるのに支給されていない場合は不合理とされ、住宅手当は正社員に全国転勤があり、転勤のない有期契約社員に支給しないことは不合理ではないと判断されています。

    また、「長澤運輸事件」では定年後再雇用者に関し、歩合給が大幅に減額されたことは不合理ではない、とされました。

    ①扶養(家族)手当について
    今般の日本郵便事件について、「扶養(家族)手当」は、生活保障や福利厚生を図り、特に扶養親族保有者の継続雇用確保が目的であるため、有期契約社員に支給しないことは「不合理」(支給しなくてはならない)と判断されました。

    また、年末年始や夏期・冬期休暇・(有給)病気休暇・祝日給も同様に与えるべきとされました。

    ②住宅手当について
    住宅手当は「住居手当の趣旨が住宅費用の補助であり、比較対象の正社員は転居を伴う配置転換の予定がなく、契約社員も住宅に要する程度は同じであり不合理」とする高裁判決を不受理としたため判決が確定(契約社員にも「住宅手当」を支給しなくてはならない)しました。

    2.中小運送業における影響
    これまでの判例で「無事故手当」「作業手当」などの仕事的手当(仕事に着目した手当)について、正社員と有期契約社員との間で格差をつけることは出来ないとされてきました。確かに同じ仕事をしているのであれば仕事的手当については同様に支給すべきという考え方は理解できます。そして属人的手当(人の属性に付随した手当)については、これまでの判例で格差をつけてはならないとされた「皆勤手当」「食事手当」「通勤手当」などに加えて、今般の最高裁判決で「家族手当」「住宅手当」に関しても諸条件によっては格差をつけてはならないという考え方が示されました。

    「家族手当」「住宅手当」については、転居を伴う異動の有無が大きな要素となっていますが、中小運送業においては事業所が一か所のみの会社など、異動そのものが物理的に不可能という会社が大半である実態があります。そのため、正社員と有期契約社員が同様の業務を行う倉庫作業の現場などにおいて、正社員に「家族手当」「住宅手当」を支給しているが、有期契約社員にはしていない場合には支給対象とするなどの実務対策が必要となってきました。

    次号以降、トラブルを防ぐ具体的対応策について解説してまいります。

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    高橋 聡

    保険サービスシステム社会保険労務士法人
    社会保険労務士 中小企業診断士

    1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
    トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。

     
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