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ブログ・高橋 聡
第192回:令和時代の運送業経営 同一労働同一賃金・最高裁判決への対策編(4)
2021年3月7日
【同一労働同一賃金・最高裁判決への対策】④
特別連載として、最高裁より出された「同一労働同一賃金」判決及び中小企業において2021年4月1日に施行される「パートタイム・有期雇用労働法」への対応策について解説してまいります。
今回は、中小運送業がとるべき具体的対策について説明いたします。
1.同一労働関連最高裁判決及びパート・有期雇用労働法への対応策
検討すべき対応策としては以下になります。運転職、倉庫職等が同一労働同一賃金になっているおそれのある企業については、可能な限りパート・有期雇用労働者法が施行される2021年4月までに整備を進めることが必要です。2.対策の具体的内容
表1―①就業規則等社内文書類の整備、諸手当の見直し
本来、労基法上、正社員・有期雇用社員別に規程類を作成する義務があるが、判決を踏まえ支給の定義等を改めて明確にする必要が生じました。そのなかで、手当を整理し、趣旨・目的をはっきりさせ、趣旨・目的に合致した支給条件を設ける(支給条件の明文化)、そして、その内容を規則等に明記することが必要です。中小運送業の実態としては形式(就業規則等に記載している内容)と実態(給与明細等実際の支給項目)が異なっていることが多いので、まずはそれを一致させる必要があります。また、判決を受け、同一労働のリスクがある中小運送業については、給与規程で賞与、退職金に関し、「有期雇用者用には賞与、退職金を支給しない」「『賞与』『退職金』は正社員としての処遇、雇用を維持確保するために」といった主旨の但し書きをすることを検討する必要が生じました。
表1―②手当の支給目的等の明確化、手当の廃止
「日本郵便」では一連の裁判を踏まえ「住宅手当」を廃止したということです。中小運送業において、例えば、正社員に現場手当、無事故手当、愛車手当、作業手当、大型手当、運転手当等の仕事的手当が支給されている場合、同一労働となっている高齢者継続雇用等の有期雇用者について格差を付けるのは不可と考えられます。正社員にいろいろな手当がついていると、均等・均衡待遇が求められ、有期雇用者にも支給する義務が生じる可能性がでてきます。また、住宅手当等、属人的手当については、今般の最高裁判決【日本郵便事件】【メトロコマース事件】などの判決前は正社員のみに支給という考え方もありましたが、事業所が1つのみである中小企業において「転居を伴う異動等の有無による」格差をつけることが難しくなりました。
住宅手当は福利厚生的な側面があり求人には有効であり、最低賃金の対象になるが割増手当の計算対象基礎に入らないといったメリットはありますが、同一労働に関するリスクがある会社については、廃止を含め検討していくことが必要でしょう。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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