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ブログ・高橋 聡
第193回:令和時代の運送業経営 同一労働同一賃金・最高裁判決への対策編(5)
2021年3月21日
【同一労働同一賃金・最高裁判決への対策】⑤
特別連載として、最高裁より出された「同一労働同一賃金」判決及び中小企業において2021年4月1日に施行される「パートタイム・有期雇用労働法」への対応策について解説してまいります。今回は、中小運送業がとるべき具体的対策について説明いたします。
1.同一労働関連最高裁判決及びパート・有期雇用労働法への対応策
検討すべき対応策としては以下になります。運転職、倉庫職等が同一労働で同一賃金になっている可能性のある企業については、可能な限りパート・有期雇用労働者法が施行される2021年4月までに整備を進めることが必要です。2.対策の具体的内容(前号の続き)
(表1)③「職務分担表」、「能力基準書」の作成正社員と有期雇用者の業務内容、責任等の「違い」を「職務分担表」、「能力基準表」で明確に区分することが必要となりました。
職務分担表、能力基準書等で仕事の内容・責任・役割の違い・人事異動の有無等を明確化し、待遇差がある場合は説明資料を作成し、有期雇用者から説明を求められた場合、具体的に説明する事が必要です。判決を踏まえると、正社員と有期契約社員等で労働条件や異動・配置転換で差を設ける場合、重要な業務に従事する正社員にふさわしい人材を確保するために、待遇面の一部について、正社員が有利であると主張できるように整理していく事が必要となりました。
正社員と有期契約社員の業務内容の違いを明確にするために、両者の差を一覧にして見える化し、「職務分担表」「能力・役割基準書」等を作成し、文書をまとめることが必要です。まずは、職務ごとに必要となる能力を書き出し、それを業務内容や責任の重さからとランク分けを行い、難易度の違いを明確化します。その上でレベルの高い業務を正社員に割り振り、ある程度軽易な業務のみ有期契約社員の担当とする等とするといいでしょう。
一見同様の仕事をしている場合でも、実際は正社員にのみ課されている仕事はないか等を洗い出し、そのような仕事に正社員以外が従事しないよう、適切に運用していくことが重要です。従業員へ業務内容の違いによる待遇差の相違を説明する上で有効な資料となるでしょう。(表1)④正社員登用制度を導入、処遇多様化
優先度の高い対策として、有期雇用契約者に、正社員登用制度を設ける事があげられます。正社員へのブリッジを用意し、待遇改善を社員が主体的に行える環境を整備(キャリアアップ助成金の利用も検討する)し、登用制度は制度化し応募を募るというプロセスがあれば、会社側の対応として有効です。また、正社員登用制度の導入を検討する場合、併せて「短時間正社員」や「勤務地限定正社員」など多様な正社員制度の検討し、実際に応募がし易い制度とする工夫が必要です。また、あわせて、多様な有期雇用制度として、賞与や退職金があるアルバイトやないアルバイト等の導入の検討をする事も人材活用の観点で有効でしょう。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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