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ブログ・高橋 聡
第219回:令和時代の運送業経営 労務トラブル実例編(12)
2022年4月1日
【労務トラブル実事例編】⑫
「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウイルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。今回も前回に続き、運送会社で実際に発生した「労務トラブル実事例」とその対応策について説明してまいります。
1.労務トラブル実事例
⑴トラブル内容
東京都所在の運送会社A社(社員数80人)は主に産業廃棄物関連の運搬を行う運送会社であり、給与は数年前に日給+残業代+出来高歩合給という方式に変更し支給していた。出来高歩合給は積下回数を基準に1回あたり900円。加えて、距離歩合給を1キロ当たり10円で計算していた。計算例:24日出勤 積下回数80回 月間4000キロ走行 日給7500円
日所定8時間 月所定170時間 残業55時間 総労働時間225時間
基本日給5500円×24日=13万2000円
残業日給2000(日2・3H)×24日=48万円(月55時間分時間外手当支払済)
積下歩合給900円×80回=72万円
距離歩合給 10円×4000キロ=40万円
歩合残業給(72万円+40万円)÷225H×0.25×55H=7000円
給与計29万9000円
(※最低賃金:5500÷8+(72万円+40万円)÷225=1184円≧東京都最低賃金:OK)給与改定後は大きなトラブルもなかったが、ある日ドライバーから、「有給休暇の際の出来高歩合給の保障はどうなっているのか?」と質問があった。
同社では、有給休暇の際に基本日給分5500円の支払いを行っていた。出来高歩合給は実際に積下作業や運行を行っていないので支給する必要はないと考えていたのだが…。
⑵事例のポイント
本事例の問題点としては、有給休暇の際に出来高歩合給の保障を実施していなかったという点です。経営者の感覚からすると、「休んでいるので、実際に運行をしていないのだから出来高歩合給は不支給でいい」というのも理解できますが、休暇時の給与保障(通常の賃金)に関しては出来高歩合給の保障も必要となります。2.対応策
有給休暇の際には、出来高歩合給の保障も必要で基本日給に加えて(出来高歩合給÷総労働時間数×1日所定労働時間数)で計算した金額(通常の賃金)を支給する必要があります。有給休暇は年5日の取得が義務付けられ、未取得の場合には罰則の適用あります。経営者の感覚からすると、稼働していないドライバーの給与保障が義務付けられることは違和感があるかもしれませんが、「休暇を取得することで安全運行につながる」「休暇が取得できる社風をPRでき、求人に役立てる」などと考え方を切り替えていくことが必要でしょう。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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