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ブログ・高橋 聡
第161回:働き方改革への対応(年次有給休暇5日義務化(1))
2019年11月12日
今年から働き方改革関連法が施行されています(【図1】)。(運送事業者に関係のない高度プロフェッショナル制、勤務インターバル制、フレックスタイム制見直しなどは除外しています)。そこで今回から、働き方改革関連法への対応というテーマで法改正への具体的な対応策について解説してまいります。
まずは、年次有給休暇年5日義務化への対応について説明します。
年次有給休暇5日義務化については大企業、中小企業問わず2019年4月から施行されています。日本の有給取得率は50%ということで先進19か国中最下位だそうです。ブラジル、フランス、スペイン、ドイツなどは100%ということで日本人が休暇取得に消極的なことは明白です。
そこで、政府が主導し法改正し「年5日消化」を義務付けました。まず、確認したいのは罰則が未取得者1人につき30万円課されるということです。法人単位ではなく未取得者1人単位であることは要確認事項です。
さて、各国の状況や取得率の低さは理解出来るとして、「運送業」の特性を踏まえ対策を検討していく必要があります。運送業の特性として、①1人1車制の会社が多いこと②翌日の配送業務は少なくとも前日には配車が行われていること③収益性などにより予備・代替えの人員配置が難しいことなどが挙げられます。
一方で年次有給休暇は原則として「自由利用」であり、①社員側に「請求権」があり、会社側には(正当事由が必要な)「時季変更権」しかないということ②労基法上は当日の始業時刻までに「連絡」(電話などでの連絡も可)してくれば原則として「付与」する義務が生じることとなります。このため前記の「運送業の特性」を勘案すると法律通りに付与することが困難であるのが実情です。
そこで、まずは社内ルールとして「有給休暇を請求する場合は1週間前までに指定の方法で届け出る」という制度を就業規則に明記することをお勧めします。法的には当日朝の連絡で付与義務が生じますが、運送業の実務上はこのような社内ルールを明文化しておく必要があります。1人1車制の場合、当日朝の連絡では業務に大きな影響があるからです。場合によっては「時季変更」を指示することも検討していきます。
弊社のお客様では、有給取得率が高い会社と低い会社が二極化しています。高い会社はHPなどで取得率の高さを訴求し「求人対策」に活用しています。会社の理念や経営者の考え方に応じた対策が求められます。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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