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物流ニュース
持続可能な農業物流へ Hacobuや秋ト協の取り組み
2023年12月28日
秋田県で生産される青果物の8割以上が首都圏で消費されるが、そうした農産物の輸送が長距離輸送となるため、ドライバーの長時間労働が問題で、2024年の労働時間規制を前に、青果物が消費地に届かなくなるのではとの懸念が広がっている。こうした中、秋田県トラック協会(赤上信弥会長)は2021年からHacobu(佐々木太郎社長、東京都港区)を始め、関係者らを巻き込み、「秋田未来物流協議会」を設立し、「農業物流」の改革に取り組んでいる。
今年で3年目となる同協議会の取り組み。令和3年の初年度から参加しているHacobu Strategyディレクターである重成学氏は「秋田県の青果物物流を持続可能なものにしたい」とし、3つの課題「農業従事者である高齢者の負担減」「ドライバーの拘束時間削減など環境改善」「積載率向上」をあげる。
今年8月に行われた実証実験では、(1)直送/集荷/幹線便による輸送最適化(2)出荷情報連携の早期化・精度向上(3)パレット運用/パレタイズ作業の最適化⑷首都圏市場への取り組みを行ったという。
その取り組みの中では、ドライバーが行っていたパレットに積む作業を荷主であるJAの作業にするなど、協議会の中で話し合われた。
「作業だけで見ると荷造りする人のコストは増えるが、コストは一つひとつでなく全体で見てもらうようにした」とし、「例えば集荷幹線を分離すると、集荷コストが上がるが、一方で幹線便を減らせる。業務を一つひとつあげながら全体を表にしていくと、コストは2割程度の削減が見込める」と指摘する。
そして削減できそうなコストを、ドライバーの待遇改善に転嫁できるようにという話もできたという。
しかし一方で、出荷情報の連携では、最初は表計算ソフトやアプリケーションを使って農家の人に入力してもらうやり方で進めたが、誤差が散見したという。そのため、出荷は従来通りのファクスで送ってもらい、全農物流がデータ化するようにした。さらに、出荷は午後1時と、締め切りを設けることで、集計をしっかりとまとめることができ、トラック台数を割り出せた。
重成氏は何度も現地に足を運び、「スケールを持って段ボールのケースサイズを図っていった」と振り返る。これまで伝票には段ボール数の記載はあったが、長ネギとインゲンでは1パレットに積める段ボール数が全く違う。こうした違いを洗い出すには、地道な作業が不可欠だったという。
その上で、重成氏は、「関係者が一堂に会する会議を行うことで、農業物流全体を持続可能なものにしていくという意識を共有できたことが大きい」と話す。 今後は、今回の実験で見つけた課題について細かな調整を行いつつ、ドライバーの拘束時間や待遇改善につなげていくとしている。
秋田県トラック協会の三杉孝昌専務は、2024年を控え「来年に向けて取り組みを進めてきた。実験は県南で行ってきたが、今後は中央や県北、秋田全体で取り組めないか、そして隣県でもできないか進めていく」とし、ドライバーのなり手が減少する中、「生産物をしっかりと運んでいきたいと考えている」という。
さらに同専務は、「どうしても青果物は『新鮮』さが求められるため、出荷されてすぐに運ぶ必要があるが、今後はモーダルシフトも検討できれば」と話している。
全農物流秋田支店の高橋敏幸支店長は「実証実験を通してさまざまな課題がみつかったが、効率的な配車のための改善につながるのではないか」と期待を寄せる。出荷情報のデータ化など、単体では新たな業務も発生したが、「2024年問題や労働力不足でトラックを減らす課題があり、クリアしていく必要があった」とし、「働くスタッフは今までの仕事と違い戸惑うことも多かったが、これを機に意識が変わり、未来の売り上げにつなげていければ」と話している。
県南の青果物を実際に首都圏に運ぶという実証実験に参加した羽後運輸(大山信太郎社長、秋田県湯沢市)と川連運送(阿部久社長、秋田県湯沢市)からも課題とともに、今後の期待も聞かれた。
羽後運輸の大山社長は、「現在は首都圏に向かう上り便について実証実験を行っているが、運用していく中で帰り荷についても運送会社としてしっかり考えていかなくてはならない。また、ドライバーからは予約システムが着荷主ごとに有・無があり、システムが異なっているのが大変だという意見も聞けた」とし、「着荷の場所やシステムに課題を感じた」という。
一方、川連運送の事業統括本部長の石塚昌志氏は、「実験に参加する2~3年ほど前から意識は変わってきた。最初は拘束時間の削減も『できるのか?』という感じだったが、今回の実験では『できる・やる』に変わった。参加してよかったと思う」と意識の変化を打ち明ける。
Hacobuには現在、秋田県との取り組みを見た他の地域からの問い合わせもあり、「同じように長距離輸送をしているところや、アナログな青果物輸送をデジタル化・DX化していきたい」と重成氏は話す。その上で、「自社のサービスだけを使うのではなく、集まったデータを活用し、Hacobuとして社会問題を解決していければ」と話している。
◎関連リンク→ 株式会社Hacobu
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