-
物流ニュース
気になる運賃交渉のタイミング「会社を、そしてドライバーを守るため」
2014年9月1日
運賃の値上げ交渉は、運送事業者にとって会社経営の今後を決める重要な場。値上げ交渉できるかどうかは、事業者の立場を如実にあらわしており、他の事業者がどのように、どのタイミングで交渉しているか気になるところだ。
事業者が運賃交渉に踏み切るタイミングとして、最も多かったのが「燃料価格の高騰時」で、次に「高速道路料金の値上げ時」。どちらも社会的に影響が大きく、業界の窮状を荷主サイドも認識しているため交渉に踏み切っているようだ。
大阪市此花区の事業者は、運送事業者はアベノミクスの恩恵を受けていないことを挙げながら、書面(写真)で荷主企業に運賃設定の見直しを求めた。「傭車不足や人員不足、車両価格の上昇などで厳しい状況が続き、自社努力はしているけれど、思うように結果が出ていないのが現状。そこで、コンプライアンスを順守するためにも、運賃の見直しを荷主にお願いした」という。大阪府門真市の事業者は「経営がうまくいかないと思った時には運賃を上げることにしているが、今はまだその時期ではない。時流に乗って値上げ交渉すると、お客さんが離れていってしまう可能性もあるので、交渉は慎重にする」と話す。
運賃交渉のコツについて同高槻市の事業者は、「距離や時間などの前年比を書類に盛り込んで見せること。どんなに口頭で『困っている』と言っても、『それなら、そちらでがんばって下さい』としか言われないため、書類は必ず用意する。また、よほど仕事内容が変わった場合などには交渉の余地はあるが、下手にお願いすると、『他社に仕事をまわす』と言われるのがオチ。むやみにお願いすることは得策ではない」と話す。
同事業者は、荷主への運賃交渉は難しいと考え、中距離の仕事を受けなくなったという。「仕事量に対しての運賃が割に合わなくなり、売り上げに対しての維持費のバランスも崩れてきていた。会社を、そしてドライバーを守るためなので荷主を切ったことは後悔していない」とも。
消費税増税前に業界全体が車両不足となり、一時的に運賃単価が上がったが、その際も値上げ交渉をしなかったという大阪市西淀川区の事業者は、「完全に交渉のタイミングを逃した。今後は燃料高騰にあわせて持続的に交渉していくしかない。新しい仕事が決まりそうになったら、運賃交渉していこうと考えている」と話す。
また、大手荷主と取引する東大阪市の事業者は「協力会社が数十社あるなかで、当社だけが値上げ要求するわけにもいかず、誰が先に切り出すのか顔を見合わせている。先走りは逆効果」と語る。
ドライバー給与へのしわ寄せ、暮らしや経済のライフラインであるトラック運送業がないがしろにされるようでは業界全体の活気を取り戻すことは難しい。「この運賃で仕方ない」と考えるのではなく、不屈の精神で運賃単価の改善にあたることが重要と言える。
この記事へのコメント
関連記事
-
-
-
-
「物流ニュース」の 月別記事一覧
-
「物流ニュース」の新着記事
-
物流メルマガ