-
物流ニュース
駐車禁止の立て看板、対症策にすぎず トラックどこに停めれば
2018年10月1日
工場周辺や臨海部などの道路でトラックが次の仕事までの間、待機する光景。トラックドライバーの働き方改善に焦点が当てられつつある今も、「駐車禁止です」との内容の立て看板が新たに設置され、駐車した場所からトラックが排除されている。荷下ろし・荷積み先構内での待機ができないことから、やむなく路上に駐車している事情に目を向けず、法令と立て看板で表面上の排除をする行為。法的な正当性は見いだせても、問題を根っこから解消していこうという姿勢とは相容れない対症策に過ぎない。
「沿線の皆さんと美観対策を行っています」「トラック運転手のマナーが問われています」「駐車禁止です」。兵庫県尼崎市にある臨海部の工場地帯を走る2本の県道に7月中旬、3種類の黄色い立て看板が設置された。
設置した県西宮土木事務所(西宮市)によると、1か所に3種類の看板を並べる形で2本の県道に13か所、計39枚を半径約500mの地域に設けた。
同事務所によると、2本のうち南北に走る県道「尼崎港崇徳院線」が、中央分離帯のある片側2車線の今のような形への整備が終わったのは昨年のこと。事務所は本紙取材に、「(植樹帯に)ゴミが捨てられている、駐車トラックがいつもいるという苦情があり、昨年から警察などと協議してきた」「2車線のうち1車線がつぶれ、都市計画の本来の機能が損なわれている」などと看板設置の経緯を話す。
では、現地はそこまでひどい状態なのか。今月上旬と中旬、夕刻と朝の時間帯を調査したが、ゴミがあちこちに散乱しているという状態ではなく、また、トラックがふさいでいるとされる道路での渋滞などは見られなかった。周りには住宅などはなく、通行人もほとんどない。
お盆明けの16日午前。現地に停まっていた浜松ナンバーの大型トラック乗務員の男性は、近くの大手運送会社のターミナル営業所の名前を出しながら話した。「昨日、関東の(大手運送会社の)営業所を出て、午前10時過ぎに荷物を下ろし終えたばかり。午後6時まで(約8時間)このあたりで待機する。ターミナルの中では休ませてもらえない。路線会社はどこもそう。午後2時から3時頃が路上駐車のトラックが一番多くなる」
1日の拘束時間に当たらない「休息期間」中のこの乗務員。「警察も駐車禁止を時々知らせに来る。そのときはグルッと一回りして周辺のコンビニでトイレを済ませ、またこのあたりに戻ってくる」。休息期間中もハンドルを握らざるを得ない状態だ。
立て看板について男性は、「どこに停めろっていうのよ。一番迷惑ではないあたりに停めているつもりだよ」
路上駐車にならない 運行管理求める警察
同じ兵庫県の神戸市東灘区内でも同様の苦情が警察に入り、大型車排除の動きがある。今月6日、兵庫県警東灘署から兵ト協に宛てて出された周知依頼の文面には、「今後も改善が見られない場合には、取り締まりを強化することも検討」するとし、搬出入待ちのトラックの違法駐車摘発に言及している。
また文面には、「トラック等事業用車両の搬出入待ちの待機場所の確保」を、各トラック事業者に求める記載も。つまり、路上駐車にならないような運行管理をあらかじめ、トラック事業者に求めているのだ。
こうした動きについて兵庫県警出身である兵ト協の脇田政司常務理事は、「警察も荷主が構内に入れてくれないトラック業界の事情は把握している。(尼崎市のケースでも)荷主、荷受け企業へ行ってトラックを入れてくれるよう荷主にお願いしているが、予約時間までスペースがないと断られているという」と話す。
長距離運行が多い神戸市内のトラック事業者は、「今や、コンビニがトラックの駐車問題に一番貢献してくれているのでは」と話す。トラックドライバーが休息期間を8時間過ごす場合、2回の食事とトイレ、そして駐車場所を提供することになるケースも多いからだ。
事業者は、「トラックドライバーは1回3000円程度の買い物で単価も高いため、コンビニにとっても悪い客ではないからだろうが、それにしてもトラックステーションが果たす役割まで担っているとは」。ト協が手にしている交付金など税金を原資とした財源で、トラックの駐車対策も必要との立場だ。
この記事へのコメント
関連記事
-
-
-
-
「物流ニュース」の 月別記事一覧
-
「物流ニュース」の新着記事
-
物流メルマガ