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物流ニュース
水屋とのトラブル 責任を負う必要あるのか
2019年10月18日
運送業界は、荷主企業から直で荷物を預かるケースは少なく、実運送会社の所に至るまでに、仲介企業が存在していることが多い。運送企業側にとって手数料など運賃が減少する部分があって歓迎されない一面があるのは確かだが、荷主企業1社で膨大な荷物量に対応することの難しさもある。本来、そうした難しさを解消でき、荷主と運送業者をつなぐ存在ともなれるが、トラブルにつながるケースもあるとされる。
今年になって運送業者A社は新しく、利用運送事業者Bとの取引を始めた。しかし、B社が紹介した荷主企業Cの仕事は、当初Bから伝えられていた条件よりも厳しく、A社がそこに行かせていた新人ドライバーは、仕事のキツさを理由に退職してしまう。
A社がB社へ「ドライバーが退職してしまうのでCの現場に行けるドライバーがいなくなった。ドライバーが1か月は残ってくれるので、それまでは継続可能だが、それ以降は請けられなくなる」と伝えたところ、Bは「Cとは長期契約を結んでおり、勝手に抜けられるのは困る。代わりのドライバーを用意できないのであれば、損害賠償とドライバーがCの仕事を受ける際に必要となった研修の費用負担分を請求する」と返答があった。
A社長は「仕事を請ける時には長期契約の話も、研修の話もなかった上、契約の書面化もされていない。Bが荷主と取り交わした契約に、なぜBとのみ取引のある我が社が責任を負う必要があるのか」と話している。
杜若経営法律相談事務所(東京都中央区)の岸田弁護士は「基本的に、委託契約は受注側にも契約を切る自由がある」とし、「こうしたケースで損害賠償請求が通るとすれば、正式に長期契約を結んで、受注側が期間終了まで時間が残っているにも関わらず一方的に契約を切ってしまい、損害が発生したとB社が立証できた場合になるのでは」と分析。
研修費用についても「必要ならば、最初から契約の中に研修費用は運送業者が負担するなど明文化し、運賃から引いておくのが一般的ではないか」としている。
契約の長期締結について「定期配送で、という文面でオファーがあった場合、期間が提示されていなくとも長期契約を結んだ扱いとなるのか」と質問したところ、「定期配送だからと言って、必ずしも長期契約を締結したと見なされる訳ではない。毎回仕事を新しく受けているという形に取られる可能性もある」と回答があった。
よつば総合法律相談事務所千葉事務所(千葉市中央区)に所属する弁護士の村岡つばさ氏は「運送会社Aが損害を補填しなければならない可能性は低い」と分析。理由について「A社の責任は、契約内容がどのようなものだったかが重要になる。しかし、依頼は行われているものの書面契約は行われていない。当事者間で取り決めがない場合民法の規定が適用となるが、AとBの間での今回の運送委託契約は、請負契約または委任契約・準委任契約として評価される可能性が高い」としている。
さらに、「それぞれで今回のケースを考えた場合、請負契約であれば、請負人からの一方的な解除は基本的に認められていない。しかし、今回の契約では契約期間が決まっていない。一つの考え方として、継続的に配送の委託があったとしても、契約書が存在しない以上、個々の配送依頼を受けた時点で契約成立とし、業務が完了した時点でそれぞれの契約も終了と考えることが可能。個々の配送依頼を責任を持って完了させているのであれば、法的な賠償責任が発生する可能性は低い」としている。
東京新宿法律事務所(東京都新宿区)に所属する弁護士の齋藤康介氏は「今回のケースでは期間が契約で決められていないので、運送会社に責任は問えない可能性が高い」としている。最近のケースで責任が問われる可能性として、信義則上の義務違反に問われる可能性を指摘。信義則上での違反について同氏は「例えば、今後も依頼が継続的に行われるという合理的な期待があったにも関わらず、それを裏切られたというケースで請求が可能になる」とする。今回のケースに当てはめた場合を聞くと、「損害賠償を行う上で、その損害と、その合理的な期待を抱かせたという立証も必要。今回のケースでは取引期間も短く、仕事のやり取りの上では契約期間のことにも触れられていないので、合理的な期待を抱かせていたとは考え難い」と分析、「こういう契約は切ることは可能。いつまでに、ということはあらかじめ取り決めておく必要がある」と指摘する。
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