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物流ニュース
定住外国人を雇用に結び付けるため 体制整備が必要
2019年10月24日
外国人を雇い入れることを目的として、政府が進める「特定技能」などの在留資格付与などの動きとは別に、会社による国内向けの一般募集に「応募してきた人がたまたま外国人だった」(神戸市内のトラック事業者)ケースが散見される。労働力不足を補うためにわざわざ国内に呼び寄せる形でなくても、すでに国内に定住している「外国人」を、いかに雇用に結び付けていくのか。「移民政策は採らない」と政治が叫ぶ一方で、統計上、そして街中の肌感覚でも確実に増えている外国人。「外国人だから面倒くさい」という素朴な感情を採用の現場に持ち込まず、応募者の人となりを重視した採用に結びつけるための心構えを持ちたい。
「そりゃ、『トラックごといなくなったら』などと考えたけれど…」。前出の神戸市内のトラック事業者は、約2か月前の採用時を振り返りながら話した。でも、「悪いケースのことを考え出したら、それは日本人を雇用する場合も同じ」と思い直し、東欧出身で、日本人女性と国際結婚している男性を雇い入れた。
在留資格は「日本人の配偶者等」。入管法の別表に掲げられた、国内滞在の資格の一つで、職種・業種を問わずに国内で就労可能な在留資格の一つだ。この在留資格を持つ外国人は法務省の統計上、「一般永住者」に含まれる。
一般永住者は昨年末時点で77万1568人で、国内に定住する外国人全体(273万1093人)の約28%を占め、在留資格の中でトップ。次いで多い在留資格「留学生」の33万7000人、「特別永住者」の32万1000人を大きく引き離している。あえて極論すると、街なかで見かける10人の定住外国人のうち3人は、「配偶者が日本人」という立場で居住していることになる。
前出の東欧人男性。前職もトラック乗務をしていたが、「労働時間が長い」との理由で転職し、神戸市内の事業者の門をたたいた。事業者によると、日本語の読み書きはできないものの、初歩の日本語会話に問題はないという。
不安はあったが、採用を決めた事業者。拠点間輸送を担う長距離運行の業務に就かせているという。事業者は、「日本語をはじめとする教育にも時間をかけたいが、人手不足による即戦力としてしか今は迎え入れられない」との実情を吐露。また、トラック乗務員の一般募集に対して定住外国人が応募してくる情勢を踏まえ、「(入管法上の)資格の問題ではなく、実態として日本語が未熟な定住外国人への教育体制が整備されているのか」と指摘。「国籍上の日本人とか外国人の話を超えたところで働き手の不足を補ってくれる『ヒト』の、実態の内容を俎上に上らせないといけない」とも。在留資格上の「特定技能」や「技能実習」の職種の中にトラック乗務員を入れる・入れないの議論より前に、現に国内に居る「外国人」についてのこうした問題意識を共有したいとの意識からくる指摘だ。
兵庫県姫路市内に拠点を構えるトラック運送会社も5年ほど前、そうした30代の「外国人」男性を一般募集によって雇用し、いまも「やんちゃな日本人と同じよう」に元気に乗務しているという。
国籍はベトナム。一般永住権を持ち、日本語はネイティブに近い「ペラペラ」だという。事業者は、「働くために国内に来る人を雇用するのはハードルが高い」とし、在留資格の新設より先に、国内定住者へのトラック業界のアピールを優先すべきとの立場だ。「国内にすでに定住している『外国人』を雇用面で差別したら、それこそ問題」と話している。
国内向けの日本語求人サイト。東京都に本社のある運送会社は、「外国人の方大歓迎」など、定住外国人の雇用を前提としたと見られる募集を出している。ビデオメッセージで同社は、「(トラック)ドライバーというとなかなか外国人の方がいらっしゃらないのですが、弊社では多数外国人ドライバーに活躍していただいてますので、日本人・外国人を問わず応募ください」と、日本語で呼びかけている。
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