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    国交省の姿勢に疑問 金銭メリットを強調 安全マネジメント

    2012年3月14日

     
     
     

    kanribu_0312.jpg 事業者が自らの活動を省みることで、次段階のステージに上っていくことをイメージした「運輸安全マネジメント制度」。取り組みいかんでは行政処分の対象となりうると位置付けられているが、取り組み状況について国交省は「?」を付けている。そこでまず、事業者に制度への関心を持ってもらおうと出した数値が「保険金の支払い額」だった。「金銭的なメリットを強調することでインセンティブを与えられれば」と国交省側は説明するのだが…。



     神戸運輸監理部兵庫陸運部の監査部門担当官は2月末、兵ト協の会員事業者向け研修会で安全確保策について講演した。そのなかで安全マネジメントの実施効果について触れた。

     当日の資料によると、マネジメント上の安全管理規定が義務付けられている事業者と義務付けのない事業者を比較するに当たり、保険金の支払い額という指標を持ち出している。保有台数が300台以上ある安全管理規定義務付けトラック運送事業者25社に関して、2006年度の保険金の支払い額は約6000万円。これが09年度には約3000万円へと半減しているという。

     一方の安全管理規定が義務付けられていない300台未満のトラック事業者10社では、支払い額が06年度の約2000万円からほとんど変化はないとなっている。マネジメントに取り組んでいることと保険金支払い額の多寡に関して、直接の言及はないが、両者を比較対照することができるグラフを掲載することで資料に目を通す者の感覚に訴えかける内容となっている。

     この研修を聞いた実務関係者の一人は「安全マネジメントに取り組むことが安全体制に寄与すると言いたいのだろうが、ではなぜ事故件数で比較しないのか。事故の多寡以外にも、保険者と被保険者の間の契約いかんで変動する保険金という指標を持ち出して『マネジメントの効果』を推し量るのは無理があるのではないか」と指摘。

     疑問意識の根底にあるのは、マネジメント制度を推し進めてきたのが、制度を作る主体にもなれば、それによる行政処分基準を設けてきたのも国交省自身だということだ。制度をつくり、その効果があることを自らの組織で分析するからには、より客観的な分析が必要なのでは、といった指摘もある。

     兵庫陸運部の担当官は本紙の取材に対して、次のような回答を寄せた。「中小事業者にまず、マネジメント制度を知ってもらい、効果があることを金銭的なメリットを強調することで、この指標を出した。効果の一つの事例として出したもので、これをもって制度の効果のすべてを言っているわけではない」。

     それでは事故件数など保険金支払い額のほかの指標を考慮したり、データ取りをした形跡があるのか。同担当官は、「ほかの指標を考慮に入れた形跡はない。事故件数などの指標のほうがより客観的だとは思うので、今後、本省もそのようなことを考えるだろうと思う」と話した。

     昨年12月、国交省はマネジメント制度の効果などについて公表している。そのなかでも保険金支払い額を指標として制度の有用性に言及している。また保険金支払い額のデータ取りを保険会社に依頼し、「業務委託費」を保険会社側に支払っている、と本紙に説明した。(西口訓生)

     
     
     
     
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