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わずかな差で事業停止 法令順守状況チェックを
2012年3月21日
いまの時代を生きるトラック経営者にとって「知っておくべき」なのは「自分の会社の法令順守度」。身近なところでいえば「いまの状態で重大事故が起きた場合、どれくらいの行政処分を覚悟しなければならないのか」ということを知る・知らないの差は大きい。西日本地区でも、先に「3か月点検の未実施」が大きなウエートを占める形で厳しい処分(事業停止)を受ける例が発生したが、リスクを早期に知り、ポイントを絞って対処することで会社の土台を揺るがすまでの処分は避けられたかもしれない。9、13の両日に兵庫県内で開かれたリスク管理の勉強会で講師を務めた和田康宏氏の指摘は、そうした思いを再認識させるものだった。
「3か月」「日常」などの車両点検に不適切な管理実態があった場合、基準日車数と「違反台数」を乗じることで予想以上に大きな処分につながることは周知の通り。3か月点検を1回飛ばすと初回違反は警告で済むが、重大事故が絡んだ監査の場合は「5日×台数」となる。1回未実施のトラックが10台あれば、これだけで50日車となるが、そうした会社の場合は日常点検にも問題があるケースが多く、最悪の場合(未実施が15回以上)はここでも10台で150日車がカウントされる恐れがある。先の勉強会で和田氏は五つのポイントに絞り込み、「これに不備があると?覚悟?が必要。まずは自分の会社の法令順守の状況をチェックすることが大切」と指摘し、「労働時間」「点呼」「指導監督」「運行指示書」とともに、4番目に「点検」を挙げた。もっとも、運送現場を歩くなかで「守りたくても守れない」との声が大勢を占めるのが労働時間の問題。同氏も、与えられた講演時間の大半をそこに費やした。
まず、実際に発生した運送会社の行政処分を持ち出しながら、「わずかな差で処分内容が天と地ほどの違いになることを知っていれば、事業停止という最悪のケースを免れることができたかもしれない」と説明。受講者らに「1か月の総拘束時間=293時間」「1日の総拘束時間=16時間」「休息期間=連続8時間」「連続運転時間=4時間」「1日の最大運転時間=9時間」「1週間の最大運転時間=44時間」の6項目の順守状況について、早期の自己チェックを求めた。
「この部分の違反がドライバーごとに何回あるかを調べてほしい」としたうえで、「重大事故を起こしてしまった場合、当局の監査で計31回の違反が見つかれば、それだけで3日間の事業停止が確定してしまう」と警告。同時に「それが30回なら事情は一変。たった1回の差で大違いになる」として、表裏一体となることでダブルカウントになりやすい1日の「拘束時間」「休息期間」について、分割休息を活用するなどして少しでも改善するほか、「直しやすい部分、例えば連続運転時間といった項目を是正することで『31回未満』を実現することは可能かもしれない」と解説した。
デジタコなど運行管理にIT機器が普及する一方、労働時間の問題を自ら露呈することにもつながるため、敬遠するトラック経営者が少なくないのも確かだ。ただ、同氏は「いまは(IT機器なども上手に使うことで)それ(問題点)を少しでも早く見つけ出さなければならない時代」と強調。
「日ごろの指導・教育の実践ぶりを行政から問われて返事ができないという状態だけは避けないといけない」と話し、受講者に向けて、「出発時の点呼で『前日に2時間しか寝ていない』というドライバーを、どう扱うか」と質問。「『キミは2時間しか寝ていないから、途中で眠くなったら適切に休むこと』と指示した旨を点呼簿に記載しておくことで違ってくる」と、日常業務の小さな積み重ねこそが明暗を分けるポイントであることを解説した。(長尾和仁)
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