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    薬物常習者が事故死 保険金拒否、行政処分で遺族提訴も

    2012年4月5日

     
     
     

    jiko_0402.jpg 愛知県のK社では昨年、追突事故で死亡した運転者から覚醒剤反応が検出され、保険会社から保険金の支払いを拒否されたほか、近く車両停止などの行政処分も下る予定だ。その一方で、遺族には労災保険が支払われており、経営者は「覚醒剤使用など夢にも思わなかった。点呼時もまったく問題はなく、会社側の管理不足という処分には納得できない。むしろ会社は被害者だ」として遺族に対し賠償金の支払いを求め提訴する構えも見せている。



     K社では昨年の義務化にともない社内にアルコール検知器を設置。点呼も運行前はもちろん、深夜など人手が足りない場合を除き実施してきた。だが、そうした中で死亡事故は発生した。

     昨年9月3日の朝、当時26歳の運転者が東京都新宿区の国道20号片側3車線の中央を走行中、突然左側に進路を変えガードレールに接触、そのまま前方に停止していた大型トラックに衝突して止まった。この事故により運転者は全身打撲で即死。事故原因は居眠り運転だと推測されている。死亡した運転者は独身で、日頃から両親と暮らす自宅にほとんど戻らず、トラックや友人宅で寝泊まりしていた。事故の前々日も休日だったが、同僚と夜中まで繁華街で遊び、自宅に帰らないまま翌日出勤していたことが分かっている。K社社長は「点呼ではいつも通り元気で寝不足といった感じではなかった」としたうえで「休日の過ごし方の注意はしていた。ただプライベートな部分に会社がどこまで関与していいのかは難しいところ」とも述べている。

     事故後、K社に中部運輸局が立ち入り監査を実施、合計155日の車両使用停止処分を内示された。また、事故では追突した相手側に対し、保険金約220万円が支払われた。しかし、K社の全損した車両代金約850万円については保険会社が支払い拒否を通告してきた。理由は死亡した運転者の体内から覚醒剤が検出されたからだ。

     実は運転者は覚醒剤の常習者で、K社長はもちろん、その事実を知らなかった。「アルコールであれば点呼の際に顔色や臭いで分かるが、覚醒剤はどうすればいいのか」と困惑するK社長。

     あいち経営コンサルタントの和田康宏氏によると、「薬物の使用を点呼だけで判断することは困難。運転者仲間から情報を得るなど、普段からコミュニケーションを取っておく必要がある」と述べ、難しいケースだと指摘する。

     死亡した運転者が以前勤務していた運送会社社長も「採用時にはまったく知らなかったが、過去に覚醒剤で逮捕歴があると自分から同僚に話していたことで分かった。他にも同僚と金銭面のトラブルがあったので辞めてもらった」と話す。

     K社にとって車両停止処分や保険金支払い拒否など、今回の事故による損害は甚大。さらに「死亡事故を起こした会社として白い目で見られている」と、今後の採用にも影響が大きいとしている。

     その一方で死亡した運転者の遺族には労災保険およそ900万円が支払われた。K社では「もちろん、当社に管理体制の不備がないとは言わない。しかし、今回の事故では我々は被害者だ」とし、遺族に損害賠償を求めるのも辞さない考えを示している。遺族側では(息子の)薬物使用の非を認めながらも「居眠りは覚醒剤ではなく、服用していたカゼ薬が原因かもしれない。労災保険は息子が一生懸命に仕事をしてきた証しなので給付は受けたい」として権利を主張している。ただ労基署では今回の事故について、運転者の薬物使用を把握していない可能性もあり、今後の成り行きでは労災給付が取り消される可能性もあるようだ。(加藤 崇)

     
     
     
     
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