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    一般会員は決定権なし? 会社法の概念は公益法人に合うか

    2012年5月16日

     
     
     

    truck4_0514.jpg 会社法にある機関の概念を公益法人法にも適用していることから今後、公益法人のいわゆる会員離れに拍車がかかることを懸念する向きがある。特例民法法人からの移行を進める全国のト協も例外ではなく、これまでの「何の役にも立たない」といった議論からさらに進行し、「組織のことを決める権限が一般会員には与えられていない」といった疎外感が出てくる恐れがあると指摘されている。



     「理事会で決めると言っても、郡部の事業者から見れば、理事会の役員はそもそも大手事業者ばかり」。4月下旬の兵ト協常任理事会で、このような意見が出され、兵ト協の定款変更に関する議題が上っていた。

     兵ト協は今月下旬の総会で定款を変更し、現在の特例民法法人から公益社団法人への移行を目指している。特例民法法人は2013年11月30日までに一般財団・社団法人、あるいは公益財団・社団法人のいずれかに移行しなければ解散とみなされるため、法人格の移行を巡る意思決定―申請―行政による認可・認定のタイミングを考えれば、現在が手続きのピーク時期となっている。

     そのなかでも法人内部の機関とその役割などを規定する定款変更には必ず総会での決議が必要なため、手続きの要と言っても過言ではない。事実、兵ト協でも半年ほど前から総会の定足数などに関して口酸っぱく広報を続けている。

     総会で諮られる兵ト協の新定款案によると、毎年度の事業報告に関しては53条に、総会に報告するだけで足りるとする内容が記されている。現行定款では事業報告は総会の承認事項であるため、新定款は報告事項に格下げされていることになる。

     では事業報告は、どの場で承認を得るのか。53条では理事会の承認を得るだけで成立するとしている。このほか、毎年度の貸借対照表と正味財産増減計算書そのものは総会の承認事項として新定款でも残るが、それらの付属明細書に関しては理事会の承認だけで成立する。
     「理事会で決めるといっても…」といった先の常任理事会での発言は、総会の相対的地位の低下を述べたものだ。理事会に人を送り込みにくい郡部の発言権は、総会でモノが言えなくなる事項が増えれば増えるほど、低下する。この委員はさらに、「会員離れにもつながりかねない」とも発言。発言権の低下が疎外感につながり、協会を辞めていく事業者が増えはしないかと苦言を呈した。
     総会の地位低下は、兵ト協だけの問題ではない。新公益法人制度を規定した「一般社団法人及び一般財団法人法」が総会の地位低下を規定しているためだ。兵庫県公益法人室の担当者は兵ト協の新定款案を見て、「法に忠実な定款だと見える」と話し、兵ト協独自の特別な条文を盛り込んだものではないとの見方をする。

     では社団・財団法人法はなぜこのような総会の規定を盛り込んだのか。それは、2005年から始まっている会社法の機関の概念を引用したからだ。
     会社法は大会社に多い取締役会設置会社か否かを基準に、総会での決議事項を規定している(会社法第295条)。公益法人の理事会にあたる取締役会を設置していない会社は、総会が一切の事項を決議するのに対し、取締役会設置会社は会社法に規定する事項と定款で定めのある事項に限って総会が決議する権限を与えられる。

     ト協のある会員事業者はこの点について、「会社法は、発言権が強くなりすぎた株主などの力を相対的に弱める働きを正当に評価することはできるが、ト協などの公益法人は全く性格が異なる。それでなくても形骸化していた総会がさらに意味がなくなり、発言権も奪われるとは」と話し、会社法のガバナンスを採り入れた公益法人の近未来を憂えている。(西口訓生)

     
     
     
     
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