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運送業界から見た 東電の優越的地位の濫用
2012年7月4日
「優越的地位の濫用」。これこそが各運送事業者の苦しみの元凶といった言葉が6月下旬、全く別の文脈でニュースになった。事業所など電力の大口需要家に対して今春、東京電力が一方的に料金値上げの要請文書を出していた事態に関してのものだ。
契約電力50キロワット以上の大口需要家は2005年から、従来の地域独占電力会社以外の発電事業者から電力を調達できる仕組みがすでにできあがっている。しかし、送電網を独占する従来の電力会社がその部門で利益を上げることで、市場競争が本来生じうる発電部門での価格競争力を向上させる体制が温存されてきた。公正取引委員会は6月22日、こうした独占状況にありながら、東京電力に頼らざるを得ない大口需要家の足元を見ながらの一方的な値上げは、優越的地位の濫用に該当するおそれがあるとして文書による「注意」を行った。
送電網の独占。ある運送業界関係者はこの言葉を次のようにとらえる。「電力以外の一般の生活、生産物資にあてはめるなら、送電網は物資輸送の足、すなわちトラックにあたる。送電網の独占とはトラック所有の独占。一つの事業者が独占状態であれば、その会社の経済上の地位が優越するのは当然」。
日々、供給者側の独占とは程遠い、供給の過当競争状態であえぐ運送業界の関係者ならではの感覚だろう。運送業界の本来の商品ともいわれるドライバーという「人材」部門の競争資源に、独占して所有できるトラック部門での利益を充てることができれば、他の人材会社を尻目に、トラック所有会社の市場での優位性はゆらぐはずがない。
発電と送電の会社を分離する方針を経産省が出したのが5月。そのカギは、電力の足にあたる送電網部門で得た経営資源を、競争部門の発電に回さないということだ。自由化がいち早く進んだトラック業界から見れば当然のことがなされずに、05年の電力自由化以後も体制が温存されてきた。今回の「優越的地位濫用」の注意指摘は、その清算をする過渡期の儀式に過ぎない。(西口訓生)
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