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違法性漂う運送現場 自主的な早期改善を
2012年7月6日
「巡回に来たト協の適正化指導員から『車検証を見せてほしい』といわれた」と運送会社の社長。所有者の欄が運送会社やリース会社になっているかなど、「名義貸しの有無をチェックするためと聞いた」。高速バス事故などの実態調査を通して「行き過ぎた規制緩和の検証」にも話が及び始めているが、一方では法改正も含めた規制強化が避けられない状況にある。トラック業界も例外ではなく、例えば従来、業務の成り行きで当たり前ともなっている「専属傭車」や、「運行途上に自宅があるドライバー」の一部にも違法性が漂うだけに、自主的な早期チェックが必要だろう。
機械メーカーの仕事を請け負っている運送会社に「うちのトラックとドライバーを預けていた」という西日本地区の下請け事業者。トラックは元請けの運送会社の構内を車庫代わりに使い、担当ドライバーの自宅も同地の周辺。所属する下請け事業者の事業所とは遠く離れているが、「これまで何年も、この状態で問題なくやってきた」と下請けの社長は話す。ところが過日、元請けから「今後は毎回、その都度オタクに仕事を発注し、オタクの指示を受けたドライバーがウチに来る格好にしてもらいたい」との要請が届いた。コンプライアンスを意識した形だけの変更というニュアンスで受け取った下請けの社長だったが、これまで特別なことがない限りは事業所に立ち寄ることのなかった自社ドライバーの「対面点呼をどうするかが問題。これまでは、すべて先方で管理してもらっていた」と明かす。
取引先にトラックを常駐させ、配車から管理までの一切を委ねるケースは意外に少なくない。ドライバーも車庫代わりにしている荷主や元請けの近隣に住み、なかには遠く離れた県外事業者が同様のスタイルで業務をこなす姿も見受けられるが、そうした例では名義貸しの可能性も極めて高い。ある社長は「法令順守が叫ばれ、行政処分も怖いが、5台の車両を置いて営業所を作る余裕などない。周辺の同業者に頼むなどして早々に改めようと思っている」と話す。
また、何を勘違いしたのか「取扱事業の営業所を開設すれば、トラックとドライバーが向こうへ出っ放しになっていても問題はないと聞いた」と、数か所に取扱拠点を構える事業者もいる。ただ、「トラックを配置しないのが取扱事業。もちろん立ち寄ることに問題はないが、あくまで144時間以内に所属する営業所に戻らないといけないことに変わりはない」(ある地方支局の運輸企画専門官)というのが正しい理解だ。
一方、「求人募集する運送会社の事業所と遠く離れた地域から応募があるというのも、トラックドライバーの特異性ではないか」と話す業界関係者もいる。例えば、広島市の運送会社が「大阪方面への定期配送業務」で募集した場合、運行途上となる福山市や岡山市に住むドライバーが面接に来る例も珍しくはない。実際に採用している運送社長に聞くと、「立ち寄った自宅で食事や入浴、仮眠を取るなどして時間を調整しているようだ」と話す。
「自宅に立ち寄ること自体に違法性があるわけではなく、トラックを駐車できる自前施設が確保できているなら問題はない」(別の運輸当局者)というものの、仮に、それをドライバーの休息期間として扱っているなら「後付けではなく、運行指示の段階で(自宅への立ち寄りや休憩を)組み込む必要がある」と補足。ただ、それ以前の問題として、いったん自宅で休んだ後に再出発するとなれば、「事業所を出る際の対面点呼」の意義は何だったのかという感もある。
ただでさえ管理が難しいといわれる出先でのアルコールチェックの対策を一段と煩雑にすると同時に、企業にとってリスクを高める行為であることは明らかだが、こうした流れが従来、一部では常態化してきた。ある行政マンは「6日以内に所属事業所へ戻っているという形になっていれば、頭ごなしに違法行為の可能性を指摘することもできず、突っ込んで調査しない限りは問題を把握できない」と説明するが、運輸産業全体の労務管理が重点的にチェックされようとしている現状を踏まえれば、早期改善が求められるのは間違いない。(長尾和仁)
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